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．
「…どういうこと？」
「私、怖かったんだよね。翔のことは好きだったし、向こうも好きでいてくれてるのかな、って思ってた。でも」
「あの日、桜の木の下に行ったら…翔との関係が、壊れちゃうんじゃないか、って」
「…」
「たとえ今 両想いでも、学校が別々になって環境も変われば、お互いの気持ちが離れちゃうかもしれない。そしたらもう、前みたいには戻れない」
「…逃げたんだよね、私」
悲しそうに微笑みながら言う、華。
「ばかだよね、私。結局、もう話すこともなくなって」
「だめだよ」
「…え…？」
「ちゃんとその気持ち…櫻井くんに伝えなきゃ」
「A…」
「わざわざ受験してここに入学したってことは、櫻井くんと向き合わなきゃって思ったってことでしょう？」
「でも…」
私は華を、華は私を、真っ直ぐに見つめる。
「…A、ありがとう」
「私、ちゃんと翔と話してくる」
華が走って、教室を出ていった。
…これで、よかったんだよね
.
帰ろうと、靴箱に向かうと
「…雅紀」
雅紀が壁にもたれかかって、待っていてくれた。
「A」
雅紀の顔を見たら、なんだか安心して、涙が頬を伝った。
すると
ふわっと、暖かいなにかに包まれた。
「…わた、し…ちゃんと、いってきた」
「…うん」
「これで…よかったんだよね」
ぎゅ、っと、抱きしめられて。
「…きっと、大丈夫だから」
「また…りんごジュース、飲んで帰ろ」
雅紀の優しさが暖かくて、
溢れる涙が止まらなかった。
*
この高校に入学したとき
正直、疑問が全くないわけじゃなかった。
どうしてこの学校に、華がいるのか。
どうして廊下ですれ違うとき、華は俺になにかを伝えたそうに見つめてくるのか。
でもこの2年間、俺はわざと華から目を逸らして生きてきた。
どうせ話しかけても、改めて正式に振られるだけだと思ったし、それに、
…好きな人が、できたから。
華のことは、もう忘れよう。
何度も、そう思ったけど。
…このままで、いいのか？
そう問い続ける、自分がいたのも事実で。
星が浮かび始めた空を見上げて、大きく息を吸う。
…もう、なんでもいい。
そのまま、家に入ろうとしたとき。
「…翔！！」
…え…
．
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作者名：＃林檎 | 作成日時：2017年8月8日 20時
