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振り向くと
目を丸くして、驚いている様子の、彼。
え、この人が話しかけてきたんだよね？
ていうか、この人……
「桜の、王子様…」
春が、始まる予感。
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「え、っと…突然ごめん、驚いた、よね？」
「こちらこそ、ごめんなさい！」
「え？」
何がごめん？ってキョトンとしてる、彼。
桜の王子様って呟いたの、聞こえてなかったんだ。
ちょっと、ホッとする。
あ、そうだ
桜が好きか、って聞かれたんだった。
「あの、好きです」
「え…」
「 桜 」
また目を丸くした。
あれ、この人が話しかけてきたんだよね？
もしかして、違う人だった？
「あ…あぁ！うん、俺も好き」
きゃああ！！
ふ、って笑った！
ふ、って！！！
そうだ、まだ自己紹介してない！
「あの、私…早坂A、です」
私が言うと、また目を丸くして
「あ、えっと…櫻井翔、です」
2年間、決して埋まることのなかった恋のページに
その３文字が、刻まれた。
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お昼休み。
いつも通り、雅紀と向かい合ってお昼ご飯。
「ねーねー聞いて！隣の子ね、チカちゃんっていう子……ちょっとA、聞いてるー？」
「…え？」
「どうしたの？なんかあった？」
「あのね、実は…」
ジーッと私の顔を見つめる、雅紀。
うぅ、なんだか緊張…。
「隣の席の人、桜の王子様だった」
チラ、っと雅紀を盗み見ると
…あれ、固まってる？
え、どうしよ、
私なんか変な事言った？
「えぇーーーーーー！！！」
雅紀が、立ち上がった！
「ヤバいよ、A！チャンスじゃん！！おめでとぉぉぉ！！」
「…ありがとう？なの？」
「応援するからね！負けないでね！！」
「うん、ありがと」
雅紀が私の手を取り合って、喜んでくれてる。
やさしいなぁ。ほんとに。
「A、頑張るんだよ！卒業したら、もう会えないかもしれないんだからね！」
雅紀が、真っ直ぐな目で私を見て。
「うん…頑張る」
心の中で、シュワッと何かが弾けて
春が始まった、音がした。
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作者名：＃林檎 | 作成日時：2017年8月8日 20時
