ミスターゲキカル。 (ページ44)

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“そのまま頑張れ”

櫻井さんにそういう言われてからまた数週間が経った

9月に突入した世間では未だ張り付くようなじめじめと

私たちを苦しめる暑さは変わり映えしない。

私の毎日もまた、変わり映えすることなく過ぎ去っていく。

お風呂上りに布団に寝そべって、なんとなくカレンダーをみた。

気が付けば宣告されたタイムリミットまで半年しかないのに

私にはまだ先輩を動かす術も策もなにもないまま。

せめて連絡をって思っても、もともと用があるときにしか連絡取ってなかったし

なんて送ったらいいかわからなくてそのまま。

あの通話を最後に、先輩とは話していない

きっとメグだったら何かと理由をつけて連絡を取ったり気を引くのも上手なんだろうな･･･

私だってなんとか先輩の好きなものでも使って気を引きたいけど

もはやすべてが謎な先輩は何が好きなのかもわかんないし

はたしてそんな誘惑に引っかかってくれるのかもわからない･･･

あ、

こういう時に周りを頼るべきなんじゃない？

櫻井さんの言ってくれたなんかあったらってこういう時でもいい？

何にもなさ過ぎっていうことが起こりましたって？

･･･でも他に何にもないし

ええい！

こうなったら私だってヤケよ

このまま先輩に何もできないまま時間を無駄にはしたくないし！

一か八か動いてみないと！

なんとか自分を鼓舞して

追加されてから1度も使ったことのなかった連絡先を呼び出す。

翔『もしもし？』

すぐに出た連絡先の主は

外にいるのか、騒音の奥でいつも通り明るい声で答える

「すみません、突然。今少し大丈夫ですか？」

翔『うん、大丈夫だよ、どうかしたの？』

「二宮さんの…話なんですけど」

翔『あー…うん、なに？』

「その、二宮さんって何が好きなんですか？」

翔『なにって？』

「映画の系統とか…好きな食べ物とか…？」

翔『んー、ちょっと待ってね』

音が聞こえなくなると、不安が募る

やっぱり今聞くべきじゃなかったかな…

メッセージで聞くくらいにしておけばよかった…？

確かに、なんで私はわざわざ電話をかけたんだろう…

あとで折り返してメッセージ送ろうかな

そんなことを考えてたら再び電話の奥から騒がしい音が聞こえてきた