ミスターゲキカル。 (ページ38)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:5,721 hit

38 ページ38

何も理解できなくなった頭は、ただただ目の前の先輩を見つめることしかできない

和「あらら、固まっちゃった」

数センチの距離で先輩が言葉を発すると、吐息が顔にかかる

その度に心臓が高鳴りを増す

和「どう？諦めてくれる？」

「…無理みたいです」

和「それは残念。笑」

顔を離した先輩は再び背もたれに身を預けると

下を向いて微笑んだ

和「面白そうだから相手してあげるよ」

「え･･･？」

和「その勝負ってやつ。卒業までの暇つぶしに。まあ結果は見えてるけどね」

せいぜい頑張ってねって私の顔を覗き込む先輩は、余裕の笑みを浮かべる

和「その代わり1個条件」

「…なんですか」

和「卒業までの暇つぶしだから、平行線のまま卒業したら俺の勝ちね」

「平行線…」

和「Aちゃんが諦めることもなく、俺の気持ちが変わることもないまま卒業になったら、その時はきっぱり諦めて」

「…わかりました」

確かに区切りがないままいつまでも頑張り続けようとするんだったら

ここまでねって線引きされた方がいいのかもしれない

そこまでいってきっぱり諦めることが出来るかはわからないけど

それまで、私だって、負けない。

和「…じゃあ帰るか」

「はい…」

結局本当に家の前まで送ってくれた先輩は、なにもなかったように来た道を戻っていった

先輩が角を曲がるまでその背中を見つめた私は

一人静かに先輩が負けますようにって、その背中に向かって呟いた

.

.

先輩に宣戦布告をしたのはいいものの

一体何をどうしたら先輩の気持ちを動かすことができるのかわからなくて

何もしないままの夏休みが過ぎ去っていく

メグに、ご飯でも花火でも誘えばいいのにって言われたけど

実際私も予定が詰まりすぎてて、

先輩を誘える余裕なんてなかった

ちなみにまだ3人にはあの日の帰りの出来事は話してない。

ドタバタと日々が過ぎていった8月の終わりだった

インターンを終えて、真夏には辛いスーツをべたつかせながら帰宅すると

ちょうどメグから着信が入った

「どうした？」

メグ『ちょっと！聞いた！？』

「なんの話？笑」

メグ『二宮さんの話！』

「二宮さんが…なに？」

少しだけ、鼓動が早まる。

メグ『彼女さんと別れたんだって！』