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部屋をでて拓也さんを探すとその姿は早くも玄関に。
時計を見たらでなくてはいけない時間ぎりぎりを針が指していた。
ちゃんとお見送りできなかったな……晩御飯どうするか相談できてないな……何時に帰ってくるかも聞けてない……でも、それ以上に、寂しいのは、なんでだろう……
「あ、あの!待って、拓也さんッ!!」
その答えが出る前に、私の口が先に言葉を発していた。
自分の口で、自分で言ったはずなのに、何故か私自身がとても驚いていて、同じように驚いた顔をしていた拓也さんが先に口元に笑みを浮かべ、「なーに?」なんて優しいあの声をだしながら、立ち止まってくれた。
急がないと、時間が来てしまう。
今日は拓也さんのお休みじゃなくてお仕事で、私もお買い物の予定があって、陽子ちゃんは気を使って私の部屋に残ってて……でも、でも……もう少しだけ時間をください。
なんて事無い今日が、記念日でもなんでもない日が、朝から幸せになれるように……
そのまま私は拓也さんの元まで小走りをした。
走りたかったけれど、走ったら下の部屋の人に迷惑がかかってしまいそうな気がしたから。
「…えっと……服を………あ、ううん…何でもない、いってらっしゃい…!」
でも、そんなに沢山考えても私はやっぱり意気地無しで出てくる言葉はただの別れの挨拶。
拓也さんは微笑むと何も言わずに私の頬に手を添えると目を合わせた。
「服を見せに来てくれたんだろ?ありがとう。
可愛い、似合ってるよ。
いってくるね、A」
その後家を出た拓也さんを見送った後私はぺたりとその場で座り込んだ。
カチリと心の中のピースがハマった音がした。
お見送りもご飯ももちろん大事だけれど、今は、「可愛い」というその一言が聞きたかっただけだった。
たった一言の、もしかしたら他の人にも言っているかもしれない一言なのに。
_______それでも、嬉しくて、陽子ちゃんをおいてこのまま溶けてしまいそうだ。
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りん - 江口さんが可愛い (2021年1月30日 21時) (レス) id: 07a6fa4ad9 (このIDを非表示/違反報告)
翔 - 初めまして!!この小説やばいです…えぐぅがかっこよすぎてキュンキュンが止まりません!!小説を読みながらにやけてます!!更新頑張ってください!! (2017年10月28日 19時) (レス) id: 09c8f80850 (このIDを非表示/違反報告)
未來 - 早く続きみたいです!きゅんきゅん止まりません(*^^*) (2016年11月15日 22時) (レス) id: b80fa960e1 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 初めまして!小説読ませてもらいました!江口くん大好きなんで、終始ニヤニヤしちゃいました(笑)これからも楽しみにしてるのでゆっくり焦らず頑張ってくださいね! (2016年11月6日 19時) (レス) id: 95d1eacfff (このIDを非表示/違反報告)
赤雛莉乃(プロフ) - 藍乃さん» ありがとうございます!そう言っていただけるとモチベーションも上がるので嬉しいです。誤字の件、先程訂正致しました……!御指摘ありがとうございました。 (2016年10月11日 19時) (レス) id: 22a564b8a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2014年12月8日 16時