新たなる王の物語の始まり part2

第六十三話 ページ16

私は、淡島さんが来るまで静かに座って待つことにした。

　しかし、室内のざわめきがおさまる気配は無かった。

　気を紛らわすように、ぼんやりと窓から外を眺めた。

　今日は、本当にいい天気だ。

　こんな空を見ていると、何もかもが非現実のように思えてくる。

　自分が王だなんて、本当に実感が無い。

　そう、何もかもが今までのように感じる。

　だけど、明らかに今の私は王という世間一般から見れば異質な存在なのだ。

　それがどこかで、悲しく感じてしまう。

　そんなことをぼんやりと考えていると、誰かに声をかけられた。

榎「あ、、、、あの！！」

あ「はい？」

　窓から声のした方に顔を向けると、そのには髪を横でしばった人がいた。

　眼鏡をかけていて、、、その、、、とてつもなく女子という言葉にあてはまる男性だった。

　いや、、、もはや男の子と表現するとしっくりくるぐらいに。

榎「僕、榎本竜哉というんですけど、その、、、お、お願いしたいことがあるんですが、、！！」

　顔を赤らめ、半ば下を向きながら榎本さんは言った。

　何だろうと私は怪訝に思ったが、一応聞いておいた方が様だろうと判断した。

あ「私にできることでしたら、、、なんでしょう？」

　榎本さんはそれを聞いて顔を輝かせた。

　そしてすぐに頭を下げて私の目の前にあるものを差し出し、、、つきだした。

　その手に握りしめられていたのは、私が初めて書いた小説だった。

榎「サインください！！」

あ「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、はい？」

　私は、予想もしなかった言葉に固まってしまった。

　その様子を感じたのか、榎本さんは顔を上げて慌てた様子で下記のように述べた(論じた)。

榎「あ、、、急に言われても困りますよね、、、！！
　 実は僕、活動始めたころからのファンでして、、、。
　 不死鳥さんの作品全て見せていただいたんですけど、どれもすごい感動的でした！！
　 まさかこんな形でお会いできるとは思ってもいなかったのですが、、、、！！！
　 それで、ですね、、、、、。
　 サイン、、、、、、、貰えると嬉しいのですが、、、、！！！」

　榎本さんは一気に言うと、上目でこちらに視線を送った。

　よく見ると、サインを書いてほしいらしきものは、初回限定版のものだった。

　この人の私のサインを欲しいということは確かだろう。

　だが、ここで一つ、問題がある。

　私は、自分のサインなんて持っていない。

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