暗い夜に ページ5
✧こちらはただの思いつきで書くお話ですので、いままでのお話と設定が異なります。単発です。
梅雨明けが間近に迫った夜。頬をなでる潮風は湿気を含んでいて生温い。静かな夜の海は、小さな波音が聞こえるのみだった。
進路、勉強。部活に、親の小言、友人との距離感。全てが上手くいかなかった。何もしたくない、誰とも会いたくない。全てが嫌になった。消えてしまいたくなった。
誰とも会いたくなかった私は、部活終わりに何故か海に来てしまって。コンクリートの堤防に座って、ただ海を眺めていた。
スマホの時計を確認すると、母からのメッセージがみえる。それだけで憂鬱だった。
スマホをまた鞄にしまい、さっきまでと同じ様に海に目をやる。
その時、今までの静かな空間が嘘の様に騒がしくなった。バイクのエンジン音が響いて、思わずそちらを見る。
数台のバイクが目の前を通って、その中の一台に乗っている人がこちらを見た気がした。目があったかは流石に分からなかったが。
私のいる場所から少し離れた路肩に彼らはバイクを置いて、楽しそうに話しているのが聞こえてきた。
そろそろ帰ろうか、と思い始めたものの、まだ親にあって平穏な心を保てる自信はない。見られたとはいえ、あの人たちも私のことなんか気にしていないだろうし、もう少しだけいて、次はどこに行こうか、と考えていた。
「制服でなにしてんの」
「ひっ、」
海の方に体を向けていたので、近寄ってきた男の人に気がつかず。声をかけられて変な声が出た。
「高校生でしょ、君」
街灯に照らされた端正な顔立ちに、明るい茶色の髪、全身黒の服。同級生には絶対いないタイプ。
「家帰りたくないの」
「あ〜、まあ、そんな感じです」
「だろうな、この時間にこんなとこいるんだもん」
彼は私の隣にあぐらをかいて座る。爽やかで甘い、彼の香水がふわりと香った。
「名前は？」
「Aです」
「俺ジョングクね」
名前までキラキラして聞こえるな、と思った。彼の全てが、私には輝いてみえた。
「ジョングガ〜早く来いよ〜！」
「は〜い！……Aちゃんも来なよ」
「私、ですか」
「うん、おいでよ」
座っていた場所から飛び降りた彼は、目尻にしわを寄せて私に笑いかけた。
「親には友達の家泊まるって言えばいいよ、行こ？」
少し高さのある堤防の下から差し出された手を、私は握る。
「よし、行こ」
彼の手は、私の手より随分大きくて、まるで、私にとっての救いの手だった。
．
続く
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j - くるんさん» ありがとうございます、とても嬉しいです！出来るだけ更新していきたいと思っておりますので、これからもよろしくお願いします＾＾ (2020年6月14日 22時) (
レス) id: 61dc5400f5 (このIDを非表示/違反報告)
くるん(プロフ) - グクに甘やかされるお話 大好物なのですっっっごく嬉しいです!!!(めっちゃタイプなお話です////)これから更新 楽しみにしてます！頑張ってください♪ (2020年6月14日 8時) (レス) id: 3a0b839ac7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：j | 作成日時：2020年6月14日 0時
