240メートルの誤算3【佐野玲於】

嘘だ ページ23

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そのあと一緒にメシ食って
お互い風呂済ませて、Aが洗濯し終えるの、テレビ見ながら待ってた。

ベランダにハンガー出して、たまにどいてーって言われて。
…クッソ、結婚したい。
なにこいつ？子どもみたいな顔しといて、家事めっちゃテキパキする。
料理もズボラだけど、家庭的で好きすぎる。
…あーもう、もっと仕事がんばろ。

なにこれ？なんかたぶん、片思いの感覚なんだよ。
好きだけど好きって言えないし
相手の思わせぶりな態度で一喜一憂して
そういう、片思いのつらいやつ。
変だよね、付き合ってるのに。


そのあと、洗濯を終えたAと
メンディーから借りたゲームで散々遊んだ。
わざわざ借りてきたって言うのダサいから、適当に嘘ついたけど。

ゲームしてる最中
ぴたってくっついて、すぐそばでAが楽しんでんの見れた。
正直、それだけで幸せだった。
一生こうしてたいって思ったし、なんなら、別れて友だちになったら ずっとこうしてられんのか？なんて考えたりもした。
それくらい幸せだったのに

「てかそういえば、元気じゃね？なんか嫌なことあったって言ってたのに。」

ラインでの会話を思い出してそう聞くと
あからさまに動揺したA。

言ってたんだよ、嫌なことあったって。愚痴聞こうかって言ったら、お願いって。

「…いやなこと、うん、あった。」
「なに。怒られた？大丈夫？」
「……ゲームしてたら忘れちゃった。」
「…忘れた？」
「…うん。」

嘘だ。
こいつ、嘘ついてる。

さっきまでの楽しかった気持ち、一瞬で消えて
なんて言葉を続ければいいか、分からなくなった。
なにがあった？って、聞けない。
あの折り畳み傘と関係あるのか

ちらって見たAの横顔
唇結んで、眉間にシワ寄ってる。
詳しく話すつもりは無いみたいで、俺ももう、何も聞かなかった。…聞けなかったし。

ブログ更新するって適当に話逸らして、空気を変えた。
とにかく、また別れたいって言われることだけは御免だから
それだけは避ける、絶対に。

なんにも気にしてない素ぶりで話しかけた。
Aも同じように笑ってたけど、そのあと携帯下ろして目を合わせたとき
気まずそうに、目を逸らされて。

思わずその腰を引いた。
Aの匂いがする。
この真ん丸な目だけは、出会った時と同じだった。


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