意地でも ページ23
.
その日の夜
ご飯食べてお風呂から出たあと
濡れたままの髪をタオルで拭きながら、部屋に入った
ベッドの横と、机の向こうのカーテン閉めて
鞄からスケジュール帳を取り出す
ティファニーブルーの、スケジュール帳
佐野先輩に買ってもらって
佐野先輩とお揃いで
その、一番うしろ
裏向きにして挟んでた、一枚の写真を取り出した
軽井沢に行った夜
先輩とふたりで撮った、唯一の写真
ちょっと眉毛上げてピースしてる先輩のこの顔、すごく好きだった
この次の日に
好きって伝えて、わたしたちの関係は変わったの
でも
亜嵐くんとは付き合っちゃダメだよって
その約束を破ったわたしに
先輩は今日、ほんとに好きになっちゃったのかよって、言った
あの言葉の意味
ずっと考えてるけど、分からない
先輩の中で、わたしってどういう立場なんだろう
ぼおっとその写真を見つめながら
蓋が開かないように、必死に心の奥に思い出を閉じ込めた
…こうやって惑わせるのは
佐野先輩の悪いところだよ
先輩が不意にこぼしたたったひとつの言葉で
わたしがどれだけ迷って苦しむか、先輩は知らない
なんてことない毎日を繰り返すたびに
それが忘れたくない記憶になっていくことを、先輩は知らない
写真、捨てたかったけど
やっぱりダメだった
もう一度裏返して一番最後のページに挟み
そのまま鞄に戻す
…好きじゃないよ
もう諦めてる
今日のあの言葉も、全然意味ないんだよ
こんなに考えたって、時間の無駄
忘れろ、忘れろ
何度も自分にそう言い聞かせ
髪を乾かそうと、部屋のドアノブに手をかけた
そのとき、ベッドに置いてた携帯が鳴り出して
慌てて引き返して手に取る
ばくばくする心臓を抑えながら見た、そのディスプレイには
着信 白濱亜嵐
その文字に、あ、って 我に返る
なにやってるの、わたし
いま、誰の名前を期待してたの
一度だけ深呼吸して、通話に切り替えた
もしもし、って声が 震えてた
亜嵐『Aちゃん？いま平気？』
A「…はい、平気です。」
亜嵐『そっか。俺いまバイト帰りでさー、暇だったから。』
明るい先輩の声に、思わず立ち尽くす
無理に笑顔を作ったら、なんか泣きそうだった
亜嵐『ん？どうした？大丈夫？』
A「…大丈夫です。…いま、お風呂から上がったところで。」
亜嵐『あ、そうなの？』
A「バイト、遅くまでお疲れ様でした。」
亜嵐『うん、ありがとう。』
意地でも、なんでもいい
佐野先輩のことはもう、考えたくない
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3776人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
宇宙(プロフ) - きなこさんの作品全て素敵で何回も読み直しています！きなこさんのペースでお話の更新、待ってますね！！暇なときにでも近々今のきなこさんの気持ちや雑談などだけでも更新してくれたら嬉しいです(*´-`)！ (2018年10月4日 22時) (
レス) id: 4ccc9e8f19 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - きなこさんの書く隆二くんは私の大好きな隆二くんです(*´ω`*)きなこさんの書く隆二くん、臣、亜嵐くん、それから佐野先輩と夢主ちゃんが大好きです。 (2018年10月2日 0時) (レス) id: 49103f1761 (このIDを非表示/違反報告)
きょーか(プロフ) - 亜嵐くんメインのお話も読んで見たいです (2018年8月29日 2時) (レス) id: 9ffd19f65a (このIDを非表示/違反報告)
はちみつちゃん。 - ひとつしかお話がない、隆二くんのお話もまたみたいなあって思ってます (( 小声 )) 毎回毎回 長文でコメントしてしまってほんとにごめんなさい(＞＜)、、 (2018年8月16日 15時) (レス) id: ab56cd607c (このIDを非表示/違反報告)
はちみつちゃん。 - れおくんのお話を書くのはきなこさんじゃなきゃやだってぐらい きなこさんの書くれおくんが好きです、(笑)多分他のメンバーもみんなです(笑) ただの登場人物って感じじゃなくて、その人そのものをみてる感じがして、本物感ってゆうんですかね？(笑) ん〜好きです、笑 (2018年8月16日 15時) (レス) id: ab56cd607c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きなこ
| 作成日時：2018年7月27日 22時
