それだけ ページ24
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A「…もしもし。」
玲於『あ、A?ごめん突然。』
外の生ぬるい風が頬を掠めて
少しくすぐったかった
A「…なにかありました?」
玲於『…うん、あの、べつに大したことじゃないんだけどさ。』
A「え?」
玲於『…昨日帰りに、A言ってたじゃん。今日お母さん誕生日だって。』
A「…うん。」
玲於『……それ聞いて、思い出したっつーか。まあ、だからなんだって話なんだけど…あの、俺の母ちゃんの誕生日、あさってだわ。多分。』
え
思わず背筋が伸びる
お母さんのお誕生日、あさって?
わたしずっと、先輩のためにできること探してたけど、なんにも見つからなくて
でも、お誕生日って
玲於『…なんか思い出してひとりでモヤモヤしてたから。ごめん、なんとなく、お前には言っとこうかなって。べつに何かするわけじゃ』
A「お祝いしなきゃ。」
玲於『え?』
A「お祝い、しよう 先輩。お誕生日おめでとうって言われて、嫌な人いないから。」
玲於『…いや、けど…え、直接?』
A「…うん。」
玲於『……さすがに無理。』
お願い、お願い
先輩に 心から笑って欲しい
それだけなの
無理やりは絶対したくないけど、ここで行かなかったら、先輩は苦しいまま
そんなの嫌だよ
A「…おめでとうって、顔見て言うだけで…お母さん、嬉しいと思う。」
玲於『…俺に言われて…嬉しいかな。』
A「嬉しいに決まってる。」
玲於『……でも…』
A「…先輩だって、何かしたいって思ったんですよね、…だから、わたしに教えてくれたんですよね。」
玲於『……。』
A「…先輩が泣いた時は、わたしが慰める。…だから、行って欲しいです。…わたしには何もわかんないけど、先輩みたいな優しいひと、お母さんが嫌うわけないって思うから。」
おめでとうを言いに行くくらいじゃ、先輩の今までの悲しみは、浄化されないかもしれない
もしかしたら、もっと深くなるかもしれない
でも、このままで放っとくわけには絶対いかない
先輩のこと、助けるって決めたから
もう、いいんだよ
こんな踏み込んで、強引なわたしのこと
先輩、嫌いになってもいいよ
でも、それでも、先輩に本当の意味で幸せになってほしいんだよ
偽善者って思われるかもしれないけど
いまは本気でそれだけを願ってる
A「……あさって、行ってくれる?」
玲於『……うん。』
小さく返ってきたその声に
ほっと胸を撫で下ろした
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maki(プロフ) - 今まで何お話、読み返したら、やっぱり佐野先輩とうまくいってほしい。。(;_;)先輩!!何してんのーー!!! (2018年8月5日 7時) (レス) id: 9583ac788f (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか - ほんとに今一番大好きな小説です。全然話長くしていただいてかまいません!笑更新これからも楽しみにしていますので大変だと思いますが頑張ってくださいね! (2018年7月5日 23時) (レス) id: cb039e5484 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - きなこさんは更新率が高いことだけが取り柄だなんて、全然まったくそんなことないですよ(^^)きなこさんのお話を読むだけで元気になれます。いつもお話を読めること本当に嬉しいです。これからも応援しています。きなこさんの思ったまま書いてください! (2018年7月5日 23時) (レス) id: 49103f1761 (このIDを非表示/違反報告)
蛍(プロフ) - さいくぅー (2018年7月5日 22時) (レス) id: 527ff0df55 (このIDを非表示/違反報告)
涼夏 - もうきなこさんの伏線が楽しみすぎます!!楽しみにしてます!! (2018年7月5日 22時) (レス) id: c6b1080ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこ | 作成日時:2018年6月16日 21時