ただいま、初恋【佐野玲於】

やられた ページ43

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その日
4限を終えて、バイト遅れそうって言うマユちゃんとは教室で別れ、ひとり階段を降りてた

はぁー、長い1日だったなあ
佐野先輩とは結局、喧嘩っぽく終わっちゃったし
いいことなかった
おまんじゅう、まだランチバッグの中だし
…なんていうか、食べたくないし…

箱根行ったんだ
先輩とサヤさん
温泉って…え、温泉？
一緒に入ったわけじゃないよね？
え、混浴とか、あるの？

気になりすぎて途中で足を止め
スマホを取り出す
箱根 温泉 カップル
調べたら、ちっちゃい露天風呂の画像 たくさん出てきた
…うわあ、そっか…部屋に露天風呂ついてるんだ

サヤさんと一緒に入ったのかな…
たぶん、そうだよね…
だって、そろそろ付き合って1年なはずだし
ていうか、付き合った初日に、もうお泊まりを…


…やだ、もう絶対やめる！
佐野先輩のこと好きなの、絶対やめる！
だって、なんかやだもん！

今度は絶対ブレない
何があってもキュンてしない
そう決意し、顔を上げた
その先に


A「……え。」


門のとこにいるの
あれ、もしかして佐野先輩？
嘘でしょ
いま決意したばかりなのに？
神様って、本当にいじわる


玲於「…あ、ちょ、待てって、A。」


俯きながら気付かれないように通り過ぎようとしたけど、失敗
普通に呼び止められる

その声だけで、なんかもう無理
胸がきゅうって痛い


A「…はい。」

玲於「いま無視しようとしたでしょ。」

A「…してないです。」

玲於「いや絶対したね。」


…ダメだ
その得意げな顔、本当に弱い


A「…今日、バイトないんですか？」

玲於「え？ああ、うん今日は休み。」

A「そっか…えっと、…あ、サヤさんと待ち合わせ、ですか？」

玲於「え？サヤさん？違うけど。」

A「…じゃあこんなとこで何して…」

玲於「……あー、ちょっと俺人探しててー。」

A「え？」

玲於「背ちっこくてー、髪は肩くらいでー、お目目くりくりしててー、下膨れでー…」

A「……。」

玲於「あ、あとすっげー音痴で、やたらと俺にひっついてくるヤツ…知りません？おれそのコ待ってたんすけど。」


どこかなぁ、とか言いながら
わざとらしく目細めてキョロキョロしてる
…やられた
もう完敗だ


A「…それってもしかして…」

玲於「…もしかして？」

A「……わたし？」

玲於「…あ、ほんとだ。君だ。」

A「……。」

玲於「…ね、一緒に帰ろっか。」


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