ただいま、初恋【佐野玲於】

惚れた弱み ページ32

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電車を降りて、ふたりで改札を抜けた
同じ大学のひとたちが 何人か歩いてる
…なんか恥ずかしいな
佐野先輩の隣、歩くの
そう思った直後


「あ、佐野くんおはよー！」


後ろから聞こえたそんな声
見たら、すごく元気そうな女の子
…佐野くん、だって


玲於「あ、おはよ。」

「ねえ、1限の課題した？わたし昨日寝ちゃって！」

玲於「あー、した。うん、した。」


…可愛いなあ
垢抜けてる
先輩、カッコいいから人気なんだろうな
わたしなんかが隣歩いてちゃ、迷惑かも
ていうか、なんでわたし、一緒にご飯食べてるんだろ？凄いよ、マユちゃんのおかげ


玲於「てか今からでも間に合うよ。たぶん。」

「ほんと？よかったあ……あれ？彼女…じゃないよね、友達？」


わたしのことちらちら見ながら、そう問いかける
なんて答えるんだろって 佐野先輩を見上げたら、目が合って


玲於「…後輩。」

「後輩？サークル入ってたっけ？」

玲於「…いや、そっか、…なんだろ……あー、俺に懐いてるコ。」

A「え、」


な、なにそれ！


「え？笑 あ、じゃあわたしお邪魔な感じかな？」

玲於「うん、まあ。こいつ的にはお邪魔なんじゃない？」

A「え、いや、」

「あ〜、ゴメンね。先行くね！」


またあとでって言い残して、早歩きで行ってしまった そのひと
学校までの5分ほどの一本道、思いがけずふたりきりに戻って…


A「な、なんですか、懐いてるって…」

玲於「あーごめんごめん。俺あの子苦手なんだよね。キラキラしてて眩しい。朝からあの子の相手すんのはキツい。」


…そういうことか
利用されたワケか


玲於「まあでも、さ。」

A「え？」

玲於「事実じゃん？…懐いてるでしょ、俺に。」


得意げな顔
わたしを見下ろしながら、満足そう
…やだ、もう
ずるい


A「…全然懐いてないです。」

玲於「またまた。俺のこと見っけたら嬉しそーな顔するくせに。」

A「し、してない！」

玲於「ふは、ウケるね、A。」

A「…もお、イヤ。男のひとに呼び捨てされたの、初めてなのに。」

玲於「え？そーなの？じゃあやめよっか、Aちゃん。」

A「えっ、」

玲於「あは、なんで？自分でイヤって言ったんだよ？マジでおもしろ、なにその顔。」

A「だ、だって…」

玲於「…バーカ、A。チビ。」


…この関係、なに？
叶わないんだから、やめたいのに
もっと好きになっちゃうよ

惚れた弱み
たぶんもう、全部手遅れ


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