ただいま、初恋【佐野玲於】

そっか ページ30

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マユ「…A、大丈夫？」


今までで一番長く感じた昼休み
あんなに楽しみだったのに、憂鬱で仕方なかった

ブラウス、似合ってるって褒めてくれたけど
直後にあんな綺麗な人が彼女だなんて言われたら
もう意味ないよ
…なんにも意味ない


A「…うん、ヘーキ…」

マユ「…そうは見えないけど。」


3限目、空きコマで
マユちゃんとそのままカフェに残り、お喋り


A「…あのさ、マユちゃん。」

マユ「ん？」

A「…さっきの写真、もっかい見せて。」

マユ「え…佐野先輩の？」

A「うん。」

マユ「…つらくない？」

A「…でも、もっかい見たい。」


自分でもよくわかんないけど
見たくないのに、見たい

戸惑いがちに携帯渡してくれたマユちゃん
受け取って見たら、さっきの写真だけじゃなくて、他にもたくさんあった

サヤさんの後ろでちっちゃく写ってる横顔とか
車、運転してる姿とか
でも一番つらかったのは、サヤさんの横顔の写真

これ、サヤさんが載せてるものだけど
…撮ったのは、佐野先輩だよね


A「…見なきゃよかったかも…」

マユ「もー、だから言ったのに。」

A「…うん、なんか…ショックっていうか…寂しい…」

マユ「…うん。」

A「……好きってこと？」

マユ「…うん。」

A「…まだ、出会って1ヶ月も経ってないのに？」

マユ「……関係ないよ。時間とか、年齢とか…性別とか…立場も、何も関係ないんだよ。」

A「…そうなんだ。」

マユ「…せっかく気付けたのに…なんかわたしまで悲しい。」


そう言ったマユちゃんが、本当に悲しそうな顔をするから
じわぁって 涙が浮かんでくる

そっか、好きなんだ
好きなんだよ
わたし、佐野先輩のことが、好き

理由とか、何もわかんないし
いつからかも、わかんないし
でもひとつだけ分かるのは、ちゃんと好きって気持ちだけ

…でも、先輩には彼女がいる
あんな美人の彼女
さっき先輩、わたしのこと 後輩だって紹介してた
すごく遠い関係みたいに聞こえるよ
もしかして、佐野先輩からしてみれば、わたしなんてたいした存在でもないのかな

それに、昨日バイト前に会ったって言ってた
わたしがずっと、会いたくて、ラインしようかなって悩んでる間
先輩はサヤさんに会いに行ってたんだ

構ってもらえて舞い上がって、こんなに気持ちが大きくなってるのは、間違いなくわたしだけ


…ああ、寂しいな
初めて好きになったひとなのに


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