2分の1ガールフレンド3【佐野玲於】

めんどくさい ページ10

Aside




その日
授業を終えて家に帰ったら、警備のおじちゃんが話しかけてきた

AちゃんAちゃん、って 手招きされて

自転車押しながら
おじちゃんの側に寄る



A「お疲れ様です。」


「ありがとう、Aちゃんもね。」


A「はい、…どうかされました？」


「いや、ここ数日玲於くんの姿を見ないけど、どうしたのかなと思って。またお仕事？」




ドキ

なんて言って説明すればいい？
優しいおじちゃんに、とても嘘なんてつけないし…




A「…その、なんていうか…わたしのせい、ていうか…」


「ん？喧嘩でもした？」


A「…そんな感じ…」




喧嘩、じゃないけど
たぶん実際、似たようなもの

戦争、じゃなく、冷戦
って感じ




「そうか、まあふたりとも同年代だから喧嘩くらいするだろうね。」


A「…うん。」


「早く仲直りするんだよ。おじさん、最近玲於くんと仲良くなったのに、なんだか寂しくてね。」


A「…うん、わかった。」




ぺこって頭下げて
自転車と一緒にエレベーターに乗り込んだ

…おじちゃんにも悪いことしてる
はあ、もう散々




部屋について、ソファーに倒れ込んだらいつのまにか眠ってた


次目を開けたら
もう外は真っ暗で


…こんなにつらいのに
ちゃんとお腹は減る。やだな

作り置きしてたスープも底をついて
仕方なく、ずっと前に買っていたカップラーメンにお湯を入れ、3分待って ソファーに持ってった


ずーって啜って
はあ、てため息


ちらって後ろを振り向くと
もうだいぶ汚くなったホワイトボードが目に入って、寂しくなる


気分変えようと思って、つけたテレビ
ぱち、ぱち、ってチャンネル変えてったら

ちょうど、ほんとにちょうど
玲於くんたちのグループ
映って

思わず手が止まる


…れおくんだ


いつもみたいに踊って ニコニコしてて



…どうしよう
こんな落ち込んでるの、やっぱりわたしだけなんだ

玲於くんはきっといま
わたしがいないから、遊べるし、変な心配もしなくていいし
だからこんな、笑顔で…



つらい
すごくつらいけど

それなのに

玲於くんが元気そうでよかった、とか
ごはんちゃんと食べてるかな、とか

そんなことばかり、頭に浮かんで


…なんで？
これが、恋ってもの？
恋って、こんなにめんどくさい？




何度も同じことを考えて
泣いて、泣き疲れて終わる


重すぎる気持ちは一向に底をつかないまま
わたしと玲於くんの距離は、開くばかりだった


．

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