2分の1ガールフレンド3【佐野玲於】

溶けて ページ29

Aside




……俺のこと
どう思ってる…？


ドキ、ドキ
聞こえるのは、心臓の音だけ



どうしよう
…好きって、言いそう

ほんとはずっと大好きなの
おにいちゃんなんて、思えない
手、繋ぎたい
ぎゅってしてほしい
ぜんぶ、玲於くんがいい


でも
言えない


わたし、好きな気持ち 大事にしたいって思ってたけど
だって、ここで好きって言っちゃったら
玲於くんはいなくなってしまう


妹でいい
…だから、どこにも行かないで





A「……玲於くんは、おにいちゃんだよ。幼なじみのおにいちゃん。」


玲於「…おにいちゃん…」


A「……うん、おにいちゃん。」


玲於「……それ、この先も変わんない？」


A「……変わるわけ、ないよ。」


玲於「……そっか。」




玲於くんが
少し寂しそうな顔で、ぽん、と わたしの頭を撫でた


胸が苦しい
こんなにつらい嘘、はじめて




玲於「……分かったよ、じゅうぶん分かった。」


A「…分かってくれた…？」


玲於「……うん。…ごめんね。」




なにが、ごめんね？
聞きたかったけど、やめた
もう声が出ない
なにか喋ったら、絶対泣いちゃう


そう思ってたけど
やっぱり、ぽろぽろ溢れてくる
枕に染み込む涙のあと

玲於くん、少し驚いた様子で
なんで泣くのって 呟いた




A「わか、んない…」


玲於「わかんないって……」


A「…だって、わかんないよ…」




ぽろぽろ
止まんない

玲於くんを困らせるの、嫌なのに
せっかく嘘ついたのに




玲於「…なんだよ、ほんと…」


A「ごめんなさい、わたし、…ごめんなさい…」




声が震える
涙も止まらない
…もう、最悪


そんなわたしを見て、玲於くん
はあってため息ついてる

ああ嫌われた、って
そう思った瞬間


ぎこちなくわたしの身体に手を回して
ぎゅって、抱き寄せてくれた


ぴたって、くっつく
1ミリの隙間もないくらい、玲於くんの腕の中で
また、溶けて



どくん、どくん、って
確かに伝わってくるこの音は
わたしの？
それとも、玲於くんの？



…もうどっちでもいいや



玲於くんの腕の中なら、眠れる気がして
においとか、温度とか、色んなものがわたしの中に入ってきて


幸せ、幸せって
それだけを考えながら、目を閉じた






わたしの身体を抱き寄せる玲於くんの手首を
あの高そうな腕時計が縛り付けていることなんて

そんなの
初めての恋に浮かれているわたしが
気付くはずもない



．

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