未完成ラバー【今市隆二】

曖昧な距離 ページ48

隆二side






A「隆二さん！これ、めちゃくちゃ美味しい！」






俺オススメのサンドイッチを片手に

もぐもぐしながらそう言ってくるAちゃん




昨日あんなに辛そうな顔で泣いてたのに

…って、そこがまたこの子の魅力なんだけど。





隆二「ね、美味しいでしょ？」


A「今まで食べたサンドイッチの中で一番美味しい！」


隆二「大げさ。笑」


A「ほんとですっ」






あー、可愛い


なんかもう、閉じ込めてずっと見てたい。


…いや、べつに変な意味じゃないけどさ。笑






昨日の夜からずっと一緒にいる。



夜はもちろん泣き顔を見て俺も苦しくなったけど

朝はいちばんにこの笑顔が見られたし

助手席に座ってはしゃぐ、子どもみたいな一面も知れたし




…もう、帰したくないな。






A「こんなに素敵な朝食、初めてです。」


隆二「そ？笑」


A「でももうお昼になっちゃいましたね。笑」


隆二「起きたの10時だからね〜。」






隆二さんのベッド寝心地良すぎて、って

幸せそうに笑いながら言ってくれる。




そうだよ、俺、その笑顔が見たいんだよ。




だいちゃんの帰りを待ってる時間が好き、なんて

あんな苦しそうな笑顔が見たいんじゃない。






昨日Aちゃんの身体を抱きしめた時


思っていたよりも小さくて

正直もう、好きだよって言ってしまおうかとも思った。




俺がそう言えば、何かが変わるかも知れない。


Aちゃんの気持ちも、俺の方に向くかも知れない。





ただ、この子を困らせたくない思いもあるし


警戒されて 離れていってもらったら俺が困るんだ。






だから、もう少しだけ


俺がAちゃんに依存してるように

Aちゃんも俺がいなきゃダメだって思うようになるまで






それまでは






A「…隆二さんのカツサンド、一口ほしい…」


隆二「えーじゃあこのトマト入ってるやつも食べて。」


A「トマト嫌いなんですか？」


隆二「うん嫌い。」


A「…言わなきゃいけないことがあるんですけど、」


隆二「え？」


A「……わたしもトマト嫌いです。」


隆二「マジで。笑 もう残すしかないじゃん。笑」


A「さよならトマトさん。」


隆二「さよなら〜」


A「まさか隆二さんもトマトダメとは…」


隆二「…俺らが結婚したらトマト食卓に出てこないね。笑」


A「すごく贅沢な例え話。笑」






この、曖昧な距離を保つんだ。


．

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