未完成ラバー【今市隆二】

またね ページ5

Aside






隆二「ミルクちゃん何にしたの？」




言いながらわたしの食券を覗き込んで来る今市さん。


…ああ、女の子らしくサラダランチにしとけばよかった。





隆二「…特盛り？笑」


A「…特盛りです。」


隆二「あはは、笑 ちっちゃい体して特盛りなんだ。笑」





そう言って、豪快に笑う。


…この人の笑顔 すごく素敵だな




なんて、思っていた矢先






「今市くん、席あった？」






そう言いながら お盆を抱えてやってきたの

わたしの正面に座ってる美人の先輩だった。




その左手にはちゃんとあの白い紙袋が引っ掛けてあって



…あ、そっか

ランチ誘うって話してたもん。



すごいな、有言実行。





隆二「あー、あっちの端っこでいい？」


「うん、大丈夫。行こう。」


隆二「ん。…またね、ミルクちゃん。」





最後にまたにこって笑って

先輩とふたり、窓際に行ってしまった。




凄いや、またねって言われちゃった。

ていうか わたしなんかのことを覚えてくれてただけで感動。




しみじみとそんなことを考えながら

既に引き換えの列に並んでたチアちゃんと合流した。





チア「ねえ待って、今市さんと仲良いとか聞いてないよ？」


A「や、全然仲良くないよ？ちょっと、その、お話ししたくらいで。」


チア「いやいや、わたしたちみたいな歳下庶民じゃお話しすること自体ありえないんだから。」


A「…でも、話してみたら結構普通だよ？」


チア「うわ、調子乗りやがったな。」


A「そんなんじゃないもん。」





ただまあ、ひとつ言えるのは

今市さんとお喋りしてると、周りの女子社員の目が本当に痛い。




わかる、わかるよ


わたしみたいな子は、きっと仲良くしちゃダメなんだよね。



カースト制で一番下にいるタイプだもん、わたし。






唐揚げ特盛りを引き換えて貰って

チアちゃんと端っこの席に隣同士で並んで食べる。






チア「大体A、だいちゃんいるんだから。今市さんに浮かれてたらダメだよ。」


A「だから、今市さんはそんなんじゃないもん。」





だいちゃんっていうのは、わたしの彼氏のことで

チアちゃんもよく知ってるの。大学が同じだったから。





チア「今市さん、優しいからファンが多いけど…Aはハマらないように気をつけて。」


A「…わかったよ、もお。」






ハマらないよ


ハマるわけないじゃん





…なんて、この時はまだ思ってた。


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