未完成ラバー【今市隆二】

噂の ページ40

隆二side






隆二「こんばんは。」


「お、いらっしゃい。」




久々に開けたバーの扉


21時半を指してる腕時計を見てから

コートを脱いでカウンターに座った。




今日は金曜日だから、もしかしたら…なんて期待も込めつつ


まあここでだいちゃんと鉢合わせしたところで、俺には何もできないかもしれないけどさ


でもAちゃんがひとりだって分かったら

今度こそ会いに行こうとか思ったりもして。





…ていうか大概俺も女々しいか。



守ってあげたいって思う子がいるのに

面と向かって、俺のとこにおいでって言う勇気もない。




ほんとのことを伝えて、Aちゃんが悲しむ姿を見たくないって


ただそれだけのことで、こんなにずるずる先延ばしにしてる。






隆二「……はあ…」


「どうしたの、ため息なんかついて。」





一杯目のカクテルを出しながら、そう聞いてくれるマスター。





隆二「…俺らしくないっすよ、ほんと。」


「隆二くんらしくない？」


隆二「…前来た時、気になる子がいるって話したじゃないっすか。」


「ああ、覚えてるよ。隆二くんが素で居られるっていう。」


隆二「そうっすそうっす。……俺たぶん、あの子のことが…その、…」


「……うん、そうじゃないかと思ったよ。」


隆二「え？」


「確かあの時、いつも頭の隅っこにいるって言ってたよね。…それってそういうことなんじゃないかなあ、なんて思ってたんだ。」






…うわあ、ますます俺らしくない。



ここ最近、恋愛沙汰とは無縁の生活だったから

そういう気持ち、忘れてたんだ。




…ああ、やばいやばい

恥ずかしい





って、そうじゃなくて





隆二「その子さ、彼氏いるんすよね。」


「え、そうなの？」


隆二「はい。…でも…あの、俺が前来た時、後から入って来たカップル覚えてます？」


「ああ、あの2人あれからよく来てくれるんだよ。毎週金曜日は必ず。」


隆二「え、マジっすか？」


「うん。今日も来るんじゃないかな。」





…ヤバい

ほんとにご対面じゃん。



一気に焦り出す俺

どうしよ、やっぱこのままじゃ…





「その2人がどうかした？」


隆二「いや…その男の方が、俺の好きな子の彼氏なんすよ。」


「え！？けど女性とふたりで…」


隆二「だから、浮気を」





してるんです



って、そう言おうと思った瞬間




ドアが開いて





「マスター、こんばんは。」





入って来たのは


噂のだいちゃんだった。


．

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