未完成ラバー【今市隆二】

この感情 ページ39

Aside





A「だって部長が無理やり仕事押し付けてくるんですもん。」


隆二「まあそういう人だからね〜」


A「ほんと、やんなる。」


隆二「俺もこの前さあ、」






朝起きて、ごはんを作り

だいちゃんを起こして ふたりで食べて

いってらっしゃいって見送ってから、わたしも急いで準備をして家を出る。



チアちゃんにおはようって言ってから仕事を始め

先輩からのイヤガラセを受けながら

たまにこうやって、非常階段で 隆二さんとお喋りするの。




家に帰ったら、なんだか不思議な気持ちになる。

これでいいのかな なんて、思ってしまう。



そんな自分が嫌で、考えないフリをしてしまうけど…






これが、最近送っている毎日のサイクル



良くも悪くも、同じことの繰り返し。







隆二「ずっと残業続いてたからさー、今日こそ定時で上がろうって思ってたのに、部長が突然臨時で会議開くとか言い出して。」


A「えー。」


隆二「えーでしょ？笑 結局19時過ぎまで帰れなかったし。」


A「隆二さん、いっつも会議出てますよね。」


隆二「んー…まあ、それなりに仕事してるからね。笑」





優しい隆二さんの横顔



一緒にいて、こんなに落ち着くようになってしまった。


最初はお喋りするだけでも恐れ多いと思ってたのに。





隆二「…ねえ、最近どう？だいちゃん。」


A「…うーん…平日は、よく家にいてくれます。」


隆二「…そうなの？」


A「はい、けど…週末は泊まりでいなかったりするから…やっぱり寂しい。」


隆二「…泊まりで、かあ。」





今日は金曜日

明日と明後日、またどこか行っちゃうのかな。







隆二「…寂しくなったら、いつでも電話しておいで。」






ちょっと落ち込んだわたしのこと

そう言って頭を撫でてくれる。



…優しいなあ





A「…ありがとうございます。」


隆二「ん。」


A「…仕事、戻ります？」


隆二「うん、戻ろっかな。」


A「じゃあ…お先にどうぞ。」





はーいって笑いながら、ドアを開けて出て行く。



その後ろ姿を見ながら


だいちゃんとは違う、何か温かいものを感じた。





…あれ…


なんだっけ、この感じ…





パタンと閉まったドア





ひとり立ち尽くしながら

この感情の名前を思い出していた。




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