未完成ラバー【今市隆二】

ライン ページ21

Aside






A「…どこか行くの？」





お風呂から上がると だいちゃんがコートを手に玄関に向かっていて



朝と同じ

その後ろ姿






「あ、ごめん。…仕事の人から連絡入っちゃってさ。ちょっと行ってくる。」


A「行ってくるって…もう23時だよ？」


「そのまま仕事行くから、…ごめんな。」





そして、閉じられるドア



…あれ？なんだった？今の。


そのまま仕事行くってことは、帰ってこないんだよね





A「……そっか、」





濡れた髪をタオルで拭きながら

ひとり 鏡の前に立った。



…幸せだって、ついさっきまで思ってたのに。





鏡に映る、冴えない顔の自分


あと少しでも可愛かったら、だいちゃんはもっと一緒にいてくれたかも


なんて、そんな論点がずれた思考に走ってしまう。





……幸せだったのに






その時、ため息をついて俯いた視線の端に

携帯が目に入って




だいちゃんに置いてかれたからって

今市さんに助けを求めるのは間違ってる



それは分かるけど…でも





携帯を手に取り

トーク画面を開く。




さっき送ったメッセージには、まだ既読はついていなかったけど





[ ひまです ]





可愛げのない、そんな文章



…はあ

バカみたい。今市さんもめんどくさいだろうなあ



内心そんなことを思って

余計なことしなきゃよかったって、後悔してた。




でも






隆二 [ 俺もひま〜 ]


隆二 [ ミルクちゃん、もう23時だけど寝なくていいの？笑 ]






返ってきたのが、そんなメッセージだったから。




この人は優しい

この人はいい人



…本当に、いい人。






A [ これでも24歳なので、まだ寝ません ]


隆二 [ 高校生くらいに間違えられるでしょ。笑 ]


A [ それ褒めてますか？笑 ]


隆二 [ もちろん。笑 ]






だいちゃんじゃない男の人と連絡をとるのは、本当に久しぶりで



なんか、色々空回っちゃうけど


でも今市さんは、そういうのを全部なかったことにしてくれるから




贅沢だけど、本当に楽なの。






そんなこと思って頭を上げると

鏡に映る自分の顔が いつの間にか柔らかくなってることに気付く。





…凄いな、今市さん


これだからモテるんだ。



．

寂しくない→←嬉しい

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す