未完成ラバー【今市隆二】

変だな ページ16

隆二side





その日の仕事帰り



同期の男友達と3人で居酒屋に寄り

いつもみたいに中身のない話で盛り上がってた。




そろそろ結婚したいとか

彼女と別れたいとか


相手がいない俺には混ざれない話題も増えて、内心寂しさも感じつつ ほろ酔いの状態で解散。



22時を指している時計を確認して、ひとり駅に向かっていた。





その途中、足を止める。



…明日土曜日だし、久々に行こうかな。





方向転換して、行きつけのバーに顔を出すことに。






カランカラン、と静かになるドアを開けて マスターと目を合わせる。





「お、久しぶり。隆二くん。」


隆二「お久しぶりです。すみません最近来れなくて。」





言いながらコートを脱いで、カウンターに座る。


何も言わなくても一杯目を出してくれるあたり、さすがマスターだな、なんて思ったりして。





「仕事忙しかった？」


隆二「そうっすね、だいぶ立場も上になってきたし…仕事も増えました。」


「去年教育係で苦しんでたのが懐かしいね。笑」


隆二「あー、懐かしい。笑」





そういえば よく愚痴を吐きに来てたっけ。


マスター 何も言わずに聞いてくれるから

すげー話しやすくて。






「それにしても…いつも一人で来るね。彼女は？」


隆二「彼女とかもうずっといないっすよ。」


「…顔は良いのに、何が問題？笑」


隆二「いや俺そんなモテないし、まあ…もし彼女できてもここには連れてこないです。」


「え？なんで？」


隆二「…マスター相手じゃないと本音で話せないっすもん。」





そう言うと、あははって豪快に笑うマスター

思わずつられて笑ってしまう。





隆二「なんすかもう。笑」


「いやあ、寂しい男だなと思ってさ。」


隆二「寂しいって…」


「いないの？隆二くんが素でいられる相手。」





素でいられる相手


その瞬間思い浮かんだのは、

くりっとした目の 丸っこい、あの子。





隆二「…そういえば、会社にひとり、気になる子がいて。」


「気になる子？」


隆二「あ、いや…気になるってそういうのじゃないっすけど、なんていうか…いつも頭の端っこにいる感じで。」


「…その子には、素でいられるんだ。」


隆二「……そうっすね。」





…ミルクちゃんの前では不思議と

本当の自分を出せてる気がする。



最初は何気ない気持ちだったけど

最近はもう、自分から会いに行っちゃってるくらいだし。





…変だな


俺らしくない。


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