未完成ラバー【今市隆二】

素直な子 ページ11

隆二side






A「…今市さん？」





黙り込んでしまった俺のこと

不思議そうな顔をしながら見上げてくる。



我に返って 咄嗟に言い訳を考えた。





隆二「あ、いや…階段濡れてなかった？」


A「はい、もう乾いてました。座ります？」






言いながら端に寄ってくれて

…でも、狭い階段に並んで座るのは ちょっと画的に面白過ぎない？笑





隆二「いいよ。笑 俺こっちでいい。」


A「え？」


隆二「ほら、これ買ってきたから。あげる。」





ミルクちゃんの正面にしゃがんで ミルクティーを手渡す。

それ見て、まん丸な目を大きく開いて





A「わあ、…ほんとに嬉しい！」


隆二「めっちゃ喜ぶね。笑」


A「実は給料日前だから自粛してたんです。それに今市さんが買ってくれるなんて…大切に飲みますね。」





嬉しい嬉しいって

何回も言いながら 幸せそうな顔してミルクティーを見つめてる。



…素直な子

可愛いな、ずっと見てられる。





A「…こんな風に優しくしてもらったの、久しぶりかも。」


隆二「…え？」


A「…最近、その…彼氏が、お仕事が忙しいみたいで。」


隆二「…そうなんだ。」


A「…でも、晩ご飯は一緒に食べられなくても、朝ごはんは残さず食べてくれるから、それだけが幸せです。」





柔らかい口調でそう言いながら

ふわっと笑う。



…好きなんだな、彼のこと。





隆二「…彼もさ、ミルクちゃんのこと思いながら頑張ってんだと思うよ。」


A「…そうかな。」


隆二「うん。…朝ごはん、美味しいの作ってあげて。」





そう言って頭を撫でると

はいって、優しい笑顔を見せてくれた。




…なんだろ

この子が幸せだと、それがこっちにも伝わってくる。




そんな気がして

だから、もっと笑顔にしてあげたいって思うのかも。



…ミルクちゃんの彼も、そういうところに惹かれたのかな。






A「よしっ、これ飲んでお仕事頑張ろうっと。」


隆二「えー今日も残業？笑」


A「今日は多分…20時退社かな…」


隆二「めっちゃかかんじゃん。笑 頑張ってよ。笑」


A「頑張ります頑張ります。…今市さんは？」


隆二「俺もう終わった。」


A「そっか…じゃあ、気をつけて帰ってくださいね。」





そう言ってフロアに戻って行く、彼女の小さな後ろ姿





ミルクティー、買ってあげてよかったなあ なんて

久々に優しい気持ちになった。


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