冬色シルエット【白濱アラン】

影 ページ38

亜嵐side







亜嵐「……A先生、」






小さく呼びかけると

ん？って、また優しく微笑みながら俺を見てくれる。





亜嵐「…さっきの反則でしょ、泣きたくなかったのに。」


A「…やっぱり泣いてたんだ？笑」


亜嵐「そりゃ泣くよ。…泣くに決まってる、あんなこと言われたら。」





先生、そう？なんて澄ました顔しながら


立ち上がって、窓の方へ歩いて

そこから見える景色を眺めてた。



A先生の綺麗な横顔が 夕日に照らされて

オレンジに色付いてる。





A「……また、こんな気持ち。」


亜嵐「…ん？」


A「……4年前と同じ。…白濱くんがいなくなっちゃうって…すごく寂しくなるの。」





そう呟いた先生


悲しそうな、苦しそうな顔をしながら

ゆっくり俺を見た。







A「…今度は、本当に最後だね。」






言いながらその頬を伝うのは、いつかと同じ

一筋の、俺だけの涙。





…わかってる。

言わなくていいよ



先生の気持ち、ちゃんと伝わってくるから






先生のそばに行って

優しく、優しく


…本当に優しく、その身体を ぎゅっと抱きしめた。





先生の小さい身体


こんなに愛しいもの、世界中のどこを探しても見つからない。






亜嵐「……先生…」


A「…うん、」


亜嵐「……好きだよ、…俺、何も変われてない。…4年前からずっと、同じ。」


A「…うん、」


亜嵐「……先生も…同じでしょ。」





返事の代わりに

俺の背中に手を回してくれた先生



…いいよ、これだけで十分



先生の幸せを 壊すつもりはないから。







亜嵐「……これで…本当に最後。」







そっと身体を離して

涙に濡れたその頬を優しく親指で拭う。



苦しそうな視線を俺に向けたまま

先生は、白濱くんって呟いた。






亜嵐「……言わなくていいよ。」






真面目な先生のことだから

今だってきっと、たくさん悩んでると思うんだ。




ずっと、俺だけの人にしたかった

俺だけを想っていてほしかった




でも、今になってようやく気付いたよ





…俺が欲しかったのは、この人の笑顔だけだ。






だから







窓から差し込む夕日

オレンジのその明かりに照らされながら


そっと顔を傾けて 先生の唇に触れた。





教室に伸びるのは

俺とA先生の重なった影







寂しい色をした

そんな、ひとつの影だった




.

一年後→←感情

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す