冬色シルエット【白濱アラン】

複雑 ページ30

亜嵐side







亜嵐「あー…つかれた。」





22時半


バスを降り、アパートまでの道を歩いていた。





今頃旦那と楽しくやってんのかな



海外の土産話なんか聞きながら

おつかれさま、って抱きしめたりして



あの可愛い顔で、笑いかけたりして





…あー、きっつ。



そんなことを思いながら、空を見上げる。




東京のこんな街中じゃ 星なんて見えないけど



いつかA先生を連れて


夜景が綺麗なレストランとか行っちゃったり

その帰りに、ほら、ドラマでよくあるような ちょっと小高い場所にある公園に行って

好きだよ、って…






亜嵐「……イタいな、俺。」






可哀想なほどひとりぼっちな自分


叶わない恋をしてると、こうなるのがオチ。




なんて思ってため息をついた時

ポケットの中の携帯が震えて


取り出してディスプレイを見ると、松木からの着信だった。





亜嵐「もしもし、どした？」


松木『亜嵐、あのさ、すげーもん見ちゃった。』


亜嵐「すげーもん？何。笑」


松木『それがさあ〜、』





得意げな松木の声

なんだよ、って急かしたら





松木『田中先生の旦那！見ちゃった！』





すげーデカイ声で、そんなこと。





亜嵐「…あっそ。笑」


松木『え、ちょ、反応薄くね？笑』


亜嵐「…なんかね、海外行ってたらしいよ。仕事で。」


松木『そうなの？…いや、そんなんどうでもいいからさ。旦那どんな奴だった？って聞いて！』





…めんどくせえな

聞きたくないって、旦那のことなんか。



って思ってたのに やたらとしつこい松木



最後は俺が折れて

仕方なく、仕方なくだよ？


旦那のことを聞くハメに。






亜嵐「はいはい、どんな奴？先生の旦那。」


松木『それがさ！もう、亜嵐にそっくり！マジで似てんの！』


亜嵐「…似てる？」


松木『そう！一瞬亜嵐かと思ったもん。そっくりだった。』


亜嵐「……そっか。」





松木との電話を切った後

なんとなく、気分が落ち着かなくて





…好きな人の旦那が自分に似てる

って、こんな複雑なこと、他にないでしょ





喜んでいい？


まあ、先生は顔で選ぶような人じゃないって分かってるけど…



…てことは、俺の性格に問題があった？






亜嵐「…もうわかんねえや。」






考えれば考えるだけ苦しくなって

結局こうして、諦めてしまう。





先生の気持ちも

俺の想いの置き場所も



俺1人じゃ、答え出ねえよ






…教えてよ、先生。



．

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