冬色シルエット【白濱アラン】

一回くらい ページ35

亜嵐side





ロッカールームでコートを羽織り

2人で門を出ると




A「…わあ、雪降ってるね。」




冷たい風と一緒に運ばれてくる

細かい雪



それを楽しそうに見上げる先生を見て

なんかこっちまで嬉しくなる。






A「…メッセージカード、どんなの買うの？」


亜嵐「…男女で違うデザイン買えたらいいかな、くらいしか考えてないかも。」


A「そっか、…喜ぶね、みんな。」





今までの俺らとは、明らかに違う空気だけど

なんか、それでも幸せだって思った。


好きな人が隣にいるから、それだけでいい






でも、神様はそれすらも許してくれないみたいで






小道を走ってた車が

ちょうど俺らの隣で停まる。


不思議に思ってると、その窓が開いて






「A！」






運転席に座ってた人が、そう先生の名前を呼んだんだ。





A「え、なにしてるの？」


「仕事帰りにちょうど通りかかるからって、さっきラインしたけど…見てないでしょ。」


A「そうなの？見てなかった、びっくり…」


「いないかなって思ったら、後ろ姿見かけて。」




そんな会話の後

乗りなよ、って 助手席の荷物を後部座席に動かしてる。




…ああ、もう、分かるよ





A「…あの、この人が旦那さん。」


「初めまして。宮下です。…先生？…にしては、若い気がするけど。」


A「あ、えと…教育実習生なの。大学3年生。」


「へえ、実習生か。…君も乗る？家まで送るよ。」





A先生の気まずそうな顔


…乗れるわけ、ないじゃんね





亜嵐「…いえ、今日は寄るとこあるので…すみません、ありがとうございます。」


「そっか、寒いから風邪ひかないようにね。」


亜嵐「…あざっす。…じゃあまた明日。……宮下先生。」






わざとらしくその名前を呼んで

ひとり、駅に向かって歩き出した。




…ああ、耐えらんねえや

ほんとに俺に似てんだもん。


オマケに良い奴って、聞いてねえし。



ちょっと仕事熱心なだけじゃん

悪いとこなんてない




俺が入る隙なんて、元から存在しなかったんだよ。







…それにあいつ、当たり前だけど 呼び捨てだった。




ずっと先生って呼んでたけど

そっか、旦那には呼び捨てされてんだよね。




……いいな


一回くらい 俺も言ってみたい。







…好きだよ、A


って。




．

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