温度 ページ13
玲於side
店を出ると 冷たい風が頬をかすめて
携帯を覗くと もうあと5分で日付けが変わろうとしていた。
玲於「…どこ行くの、チカちゃん。」
チカ「…送ってよ、」
玲於「…いいけど、どこ？涼太くん家？」
チカ「…言ったでしょ、わたし今ホテル住まいだって。」
…なんだよ、その誘い文句
玲於「…涼太くんはいいの？」
チカ「…なにが？」
玲於「だから…涼太くんいるのに、他の男をホテルなんか誘っていいの？って。」
チカ「…誘ってないよ？…ただ、送ってって言ってるだけ。」
…ずりいな。
さすが大人。
コレ、朝になったら全部忘れてるんでしょ？
この夜のこと、俺ばっか忘れらんなくて
俺ばっか気にして
玲於「…じゃあ、送るだけね。」
チカ「…送るだけ。」
玲於「…送るだけだよ。」
送るだけで、終わるわけないけど。
でももう いいかって思ってた
朝、チカちゃんが目を覚ます前にホテルを出て
俺がいた形跡なんか絶対に残さずに
ずっと好きだった人と一晩過ごせるなら、忘れられてもいい。
…そう、覚悟を決めたはずだったのに。
後ろから近づく自転車
酔ってるからか、それに気付かないチカちゃん
玲於「チカちゃんこっち来て…」
言いながら繋いだその左手は
びっくりするくらい冷え切っていた。
玲於「…手、冷た。」
チカ「…冷え性で。」
玲於「そっか…」
好きな子が目の前にいるのに
その瞬間思い出すのは、あの小さい手の温度だけだった。
……あいつ、泣くかな。
俺がチカちゃんとホテルなんか行ったら
なんて言うかな。
玲於くん、と 俺を呼ぶあの声が 震えるかもしれない。
よかったね、って 無理して笑うかもしれない。
自意識過剰？
こんなこと思ってんの、俺だけ？
…なんだよ、もう
玲於「…チカちゃんごめん、俺、送れないわ。」
チカ「…え？」
玲於「…涼太くんと、ちゃんと仲直りして。」
ちょうど停まったタクシーにチカちゃんを乗り込ませて
なんてことない顔をしながらその場を離れた。
…Aのことを思い出すと
どうも上手くいかない。
好きな子がそばにいたはずなのに
結局Aのことばかり考えてる。
歯がゆくて
それでいて抱きしめたくなるような
俺がこの気持ちの名前に気付くのは
もう少し先のお話。
．
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nenekos0204(プロフ) - なんか1個1個の会話とかが自然で面白くてずっっともんでたいって思うお話です！！ (2020年5月3日 19時) (
レス) id: 855b5832ad (このIDを非表示/違反報告)
麦茶犬 - キュンキュンしすぎて、にやにやがとまらないです(笑)！応援してます！ (2018年2月1日 18時) (レス) id: 97f101f8e3 (このIDを非表示/違反報告)
さき(プロフ) - 昨日友達の勧めで読み始めました！きゅんきゅんして終始ニヤケてます...笑 引き続き読みたいと思います(″ﾉдﾉ） (2016年12月26日 17時) (レス) id: 44b2651ac8 (このIDを非表示/違反報告)
佐野恋雪(プロフ) - ド(クセンヨクが強く 自分の気持ちを)S(になることでしか表現出来ない)玲於くん 略してドS！笑 思わず笑ってしまいました、最高です(*´艸`)笑 (2016年12月7日 23時) (レス) id: b87880982e (このIDを非表示/違反報告)
さのあき - 毎日の更新ありがとうございます！楽しみにしすぎて仕事が捗ります！これからも応援してます！ (2016年12月7日 22時) (レス) id: 74ab73a03d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きなこ
| 作成日時：2016年11月25日 20時
