ユアマイドール【佐野玲於】

分かってるのに ページ43

Aside





玲於「…ちょっと来て。」





そんな言葉とともに、外へと連れ出される。



…笑ってなきゃ、ダメ。

こんなしかめっ面見られたら 嫌われちゃう。





A「…な、なに？もう、手首痛いじゃん。」


玲於「だから…無理して笑うなって言ってんでしょ。」





…ずるいな

無理させてるの、玲於くんなのに。





でも、それでもいいって思った。



チカさんが好きなんだよね、なんて

そんなことを口走ってしまったあの夜のことは、もうお互い忘れて



今まで通りのわたしたちで

喧嘩して、最後に笑えれば


それがわたしの幸せだって



…ほんとにそう思ってるわけじゃないけど

必死に言い聞かせていた。







……でも








玲於「…好きなんだよ、チカちゃんのこと。」







…それももう、終わりだね。







玲於「…涼太くんの彼女だし誰にも言えないし、お前に言うのも違う気するけど…A、分かりやすすぎだから。…このままほっといたらバレちゃう気がして。」


A「…ごめん。」


玲於「……いや、俺の方がごめん。」






…なんで玲於くんが謝るの？


それって わたしの気持ちに対しての、ごめん？




そんなことを考えてたら、鼻の奥が痛くなって

胸が苦しいくらい熱くなって






A「…分かってたもん、わたしより玲於くんのほうが分かりやすいよ。」


玲於「…いや…」


A「…誰にも言わない。」





トイレ行ってくるね、って笑って言って

玲於くんに背を向けた。



廊下を曲がった瞬間、堰を切ったように涙が溢れてきて…






…ああやっぱり

本人から言われるのって、違うな。




つらいな


…上手くいかないな






A「…好きなんだよ、…かあ。」






ぽろぽろこぼれる涙


拭いてくれる誰かなんて、いるわけがない。




…玲於くんは、わたしを追いかけたりしない。






どんどん想いが汚れていく。


誰も悪くないのに、誰かに悪くなってほしいと思ってる。









…ああわたし、好きになんてなるんじゃなかった。








出会わなくてよかった


他人同士でよかった


あんな幸せ、知るんじゃなかった







やめたい、やめたい


もう 片思いなんてしたくない。






ちゃんと分かってる


これは、叶わない恋だって






分かってるのに









…なんでこんな時に限って


玲於くんの笑った顔が 頭から離れないんだろう。





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