三色スミレ 特別編

お迎え ページ10

Aside






今市さんにごめんなさいを伝えてお店を飛び出した。



遠藤くんに教えてもらった居酒屋に急ぎながら

どうしようどうしよう、って、そればっかり。




酔ってる佐野くん甘えてくるから

どんな顔したらいいかわかんないもん。





そんなこと考えてたら、タクシーで10分もしないうちに到着。



お店の前に、佐野くんのスマホ持ってる男の人がいて





A「…遠藤くん、ですか？」





わたしがそう声をかけると

ああって笑顔になった。





遠藤「Aちゃんですか？」


A「はい、すみません佐野くんが…」


遠藤「いやほんとこっちが申し訳ないっす。わざわざ来てもらって。」


A「いえ…」


遠藤「俺ら同じ部署なったばっかで住所も分かんないんすよ。」





…そうだよね。

ていうか、友達作るの早くない？


そういうとこ、ほんとに凄い。





こっちです、って案内された店内は

まさに 男の人が飲むお店って感じで。



なんていうか、わちゃわちゃしてる。

さっき今市さんと飲んでたお店とはかけ離れてるもん。





そんなお店の端っこで、机にうつ伏せて寝ちゃってる佐野くん。


…佐野くんの寝顔なんて、ほんとに久しぶりに見たかも。





「あ！ほら玲於！Aちゃん来たよ！」


「マジでありがとうございます！」





佐野くんの周りの男の子たち

口々にそう言って、わたしに向かって手合わせてくる。



…やだやだ、恥ずかしい。






玲於「……A…」






目つむったままぼそっと呟いて


…相当酔ってるな、コレ。





「玲於起きて！」


「いつまで寝てんだよー、」





男の子4人がかりで声かけても 全く起きる気配を見せない。


こんなのわたし、連れて帰れないよ





半ば諦めながら佐野くんに近寄った。






A「……佐野くん、」






名前を呼んで、肩に触れようとした

そのとき




今まで寝てたのが嘘みたいに

がばって頭上げて、わたしのこと 真ん丸い目で見上げてきた。






玲於「……夢？」






ぽかん、としたその表情が可愛くて

思わず笑ってしまう。


夢じゃないのに。





「待って、秒で起きたじゃん。笑」


「俺らの努力無駄〜」





そう言って笑ってる周りには目もくれず

わたしを見つめる視線を逸らさない。


…恥ずかしい、





A「…帰ろう？」


玲於「……うん、」





そう言って差し伸べたわたしの右手を

佐野くんがぎゅっと掴んだ。



．

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