三色スミレ 特別編

これがいい ページ38

玲於side






A「佐野くん、苦し…」


玲於「…うるせえ。」




Aの首元に顔を埋めて

その存在を何回も何回も確かめる。




…ほんとに、Aだよな。


今俺に好きって言ってくれたの、Aだよな。






玲於「……あーもう無理、信じらんねえ。」


A「…わたしも。」


玲於「…なにがわたしもだよ…」





散々焦らしやがって

こっちはいっぱいいっぱいなんだよ





玲於「…ようやくじゃん、…マジでもう、あーもう…」


A「…あれ、泣いてる…」


玲於「……泣いてない。」





信じらんない、ほんとに



こいつが俺を好きになってくれたこととか

今鼻の奥の方が痛いのとか。






身体を離して

大好きなこの泣き顔を見つめる。




…俺の


全部、俺の。




相変わらず下がってる眉毛も

丸っこい目も

長い睫毛と、ちっちゃい鼻

そしてこの、赤い唇も







玲於「…ねえ、もっかい言って。」



A「……好きだよ、佐野くん。」







笑った俺を見て、Aも嬉しそうに目を細める。


…なにこれ、天使じゃん。






A「…佐野くんも、言って？」


玲於「……好き。」






Aの細い腰に手を添えて

ゆっくり、その唇に触れた。




こんなに一緒にいて、こんなに好きだったけど

これがほんとに初めてのキス。




…大事にしてきてよかった。






玲於「…業者さん来ちゃうかなー…」


A「…11時からって言ってたの、嘘？わたし走って来たのに…」


玲於「嘘じゃないし。なんか渋滞してて遅れてるって。…にしても遅すぎ。」


A「ほんと？…ついてる、わたし。」


玲於「…今まで運なかったの、この日のためだったりして？」


A「ふふ、絶対そうだよ。」






至近距離で見つめ合いながら

そんな会話。



こうなるのが当たり前だったみたいな空気が嬉しくて、思わず笑ってしまった。








玲於「……さて。引っ越しのキャンセル料、どうします？Aさん。」


A「……焼肉？」


玲於「…食べ放題？」


A「デザートもつける！」


玲於「よっしゃ決まり。」







あーあ、


俺の人生、きっとこれからもこんな感じなんだろうな。



Aに振り回されて、ワガママ言われて

でも結局俺が折れちゃって







だけど


これでいい、これがいい







隣にいるのがAなら


どんな未来でも幸せだって思うから。





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