三色スミレ 特別編

ずっと ページ37

玲於side





A、まだはあはあ言ってる。



…走って来たの？

お前、運動音痴じゃん。



何してんだよ…ほんと






A「…佐野くん、」


玲於「…はい。」


A「……わたしを…好きになってくれてありがとう。」





…何言い出すかと思えば

そんなこと？



それ言いたくて、わざわざここまで来た？





玲於「…うん、俺も…好きになれてよかったって思ってたとこ。」


A「…うん、」


玲於「…まあ、ほら。引っ越したらさ、新しいお隣さんがめちゃくちゃ美人かもしんないし、」


A「やだ、」


玲於「……え？」





息切れの隙間に聞こえた、その2文字


…やだ？






玲於「やだって…」


A「…行ったら…やだ…」






…これ、聞き間違いじゃないよね



その証拠に

Aの丸っこい目から、涙が一滴溢れてる。






A「……佐野くんだけは、嫌だ。いなくなってほしくない…お願い。」


玲於「…けどお前…」


A「佐野くんが一番大事だって…やっと気付いたの、」





ぽろぽろ溢れてくる涙


でもたぶん、悲しいからじゃないでしょ？



自分の気持ちに向き合ってる

それを必死に伝えようとしてくれてる


頑張り屋さんな、Aの涙




何年一緒にいると思ってんの。

これくらい分かんだよ、俺。







玲於「…一番大事？」






優しく聞けば、俺の目をじっと見つめて







A「……ずっと、わたしが死ぬまで、ずっと…隣にいてほしい。」






震える声で、そう伝えてくれた。




…ああ、なんだこれ


好きな子から必要とされるって、こんな気持ちなんだ。



…こんなに、幸せなんだ。






玲於「…それ、もっと分かりやすく言ってよ。」






欲張りだな、俺

でもいいよね？4年も我慢してたんだから。





顔を赤くさせたAは

恥ずかしそうに俯いた後、もう一度俺を見上げて







A「……佐野くんが好き。」






それだけ、ゆっくり。






玲於「……嘘じゃ、ない？」


A「…嘘じゃないよ、」


玲於「…なんで…そんなのいつから…」


A「……わかんないけど…でも、佐野くんが好き。」






…なんだよ


ずりいよ



あんだけ俺のこと友だちだって言ったのに

あんだけ俺のこと避けたのに






…ああもう







玲於「……俺だって好きだわ、…大好きだわ、マジで…」







抱き寄せたこの身体





好きで好きで、たまらないんだ。



．

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