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行きな ページ34

Aside





道が混んでいたせいで、空港に着く頃には既に11時を過ぎていた。




ラインに届いていたカフェの名前


エレベーターに飛び乗って、そのお店まで急いだ。





薬指をもう一度見つめて

開いた扉から足を踏み出す。




カフェの入口の前に、大きなキャリーケースを持った臣くんがいるのが見えて






A「臣くん、」





駆け寄りながら名前を呼ぶと、顔を上げて

いつもの優しい笑顔。




何も言わないその表情からは

緊張してるのか何なのか、よく読み取れなくて






A「遅れてごめんね、渋滞してて……ママたちは?」





お店の中を外から覗いても、それらしい姿はない。

…また別のお店?






A「…臣くん?」


広臣「……来ないよ。」






いつもの落ち着いた口調

変わらない表情




…いま、なんて?






広臣「……A、左手出して。」






頭の中が真っ白のまま

言われた通り左手を差し出す。




そんなわたしの手を取って、薬指から婚約指輪をそっと引き抜いた。






広臣「……今晩だけでいいからって、言ったじゃん。」


A「…え?」


広臣「……Aのために選んだからさ…どうしてもつけてほしかった。ごめんな。」






そのまま指輪をポケットに入れて

わたしの頭をそっと撫でてくれる。






広臣「……行きな、玲於のとこ。」






そう呟いた臣くんの瞳があまりに悲しくて

でも、それよりもっと、優しくて






A「…なんで…」


広臣「…ここまで引き延ばすつもりなかったのに…お前が忘れものとか言うから。」





冗談っぽく、笑いながら言うその姿


思わず胸が熱くなって

…だめだ、泣いちゃう。





広臣「……Aが恋してたのは、俺じゃない。…俺との思い出だろ。」


A「…ちが…」


広臣「……俺らはまた会える。縁だって絶対途切れない。…でも玲於は…手離したら終わりなんだよ。」





そっと、指輪のないわたしの左手を握った臣くん


握り返すこともできなくて

ただ、頬に伝う涙を感じるだけ。





広臣「……玲於、行っちゃっていいの?」


A「…やだ、よ…」


広臣「……だったら…ほら。」






背中押して、行きなって。






広臣「……今度会うときは、従兄妹の兄ちゃんね。」






涙が視界を覆って よく見えない

臣くんの声も、篭って聞こえて




ただ、この人に出会えて本当によかったって


空っぽの頭の中で、それだけは分かってた。


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はなこ(プロフ) - 号泣しながら何回も読んでます。佐野くんが報われてほんとに幸せです、佐野くんラストを作ってくださってありがとうございます( ; ; )三色スミレもそうですが、きなこさんのお話どれも大好きです。ほんとに本出してほしいです(笑) (2020年3月25日 17時) (レス) id: 7f49a4f7b8 (このIDを非表示/違反報告)
まなみ(プロフ) - やばいです( ; ; )一気に読みました。臣くん玲於くんが好きなので、めちゃくちゃキュンキュンしたり、切なくなったり。玲於くんオチが良かったのでアフターストーリー読んでみたいです! (2019年9月15日 20時) (レス) id: 4674ba14b6 (このIDを非表示/違反報告)
よしのちゃん(プロフ) - 突然読みたくなって一気に読み返しました。きなこさんの作品はいつみても素敵な作品しかなくてほんとに大好きです。感動する作品をいつも有難う御座います..! (2019年5月31日 20時) (レス) id: c95bcff958 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - 三色スミレ、大好きなお話です。細かい部分まで書かれていたり、言動も本物みたいで。きなこさんは本当にすごい方です。おみくんのラストもれおくんのラストも選べないくらい素敵な素敵なラストでした。何度読んでも大好きなお話です(^^) (2018年2月23日 22時) (レス) id: 05e37e8b83 (このIDを非表示/違反報告)
mugi(プロフ) - おんもしろかったです、玲於くん、私得でした。 (2017年12月26日 1時) (レス) id: 4db51b5e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2016年10月28日 22時

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