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Aside





A「ごちそうさまでした。」


玲於「ごちそうさま。…美味かった。相変わらず。」


A「…それはどうも。」





いつも通り、綺麗に完食してくれて

いつも通り、2人でお皿洗って




…思い出って、やっぱりどこか悲しい。



戻らないんだ なんて

そんな当たり前のことを思ってしまう。





A「…楽しかったね、たくさん。」


玲於「……うん。」


A「…佐野くんがお隣さんでよかった。」


玲於「…俺も。」





水道を止めると、一気に静かになって。


…もう帰らなきゃ。

佐野くんの顔見たら 泣いちゃいそう。







A「……じゃあ、わたしそろそろ、」






帰るね、と

言いながら背を向けたわたしの手首



何も言わずに、佐野くんがそっと掴んだ。





…ああもう、引きとめないで。


ほんとに泣いちゃうよ






玲於「……ついでに、言っとくわ。最後だし。」






わたしの背中に優しく語りかけるのは


聞いてるだけで安心して

心が温かくなる、そんな、いつもの佐野くんの声。






玲於「……俺、大学で嫌なことあったり…今もだけど、上司に怒られたりした時さ、…いっつもお前のこと思い出して、勝手に元気もらってた。」


A「…え?」


玲於「……なんか知んねえけど、泣きそうになったとき、いっつもお前のこと思い出しちゃって。」






ダサいよね、なんて 呟いてるけど


わたし、本当に 本当に嬉しい。






玲於「…たぶんこれから俺、色んな人と恋愛して、お前のことなんか思い出になっちゃうかもしんないけどさ。…でも、悲しいことあったときは、Aの顔浮かんでくると思う。」


A「…うん。」


玲於「……未練とかじゃなくて…お前はたぶん、ずっと特別。」





……特別


その単語は嬉しいようでとても苦しくて



もう過去には戻れないこと

後悔しても遅いこと



一瞬で現実を突きつけられた。





……やっぱり、ほら、わたしの道はここじゃない。






玲於「…Aには笑っててほしいから…だから…ちゃんと臣さんの奥さんになって、待ってなきゃね。」


A「…うん、わかってる。」





わかってる、と

もう一度呟きながら 佐野くんの方を向いた。



いつの間にか溢れていた涙は

頬を伝って下へと落ちていく。








玲於「……泣き止ませんの、これで最後ね。」







苦しいくらいに強く、わたしを抱き寄せた腕。





広がるのは

幸せな痛みだけだった。



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はなこ(プロフ) - 号泣しながら何回も読んでます。佐野くんが報われてほんとに幸せです、佐野くんラストを作ってくださってありがとうございます( ; ; )三色スミレもそうですが、きなこさんのお話どれも大好きです。ほんとに本出してほしいです(笑) (2020年3月25日 17時) (レス) id: 7f49a4f7b8 (このIDを非表示/違反報告)
まなみ(プロフ) - やばいです( ; ; )一気に読みました。臣くん玲於くんが好きなので、めちゃくちゃキュンキュンしたり、切なくなったり。玲於くんオチが良かったのでアフターストーリー読んでみたいです! (2019年9月15日 20時) (レス) id: 4674ba14b6 (このIDを非表示/違反報告)
よしのちゃん(プロフ) - 突然読みたくなって一気に読み返しました。きなこさんの作品はいつみても素敵な作品しかなくてほんとに大好きです。感動する作品をいつも有難う御座います..! (2019年5月31日 20時) (レス) id: c95bcff958 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - 三色スミレ、大好きなお話です。細かい部分まで書かれていたり、言動も本物みたいで。きなこさんは本当にすごい方です。おみくんのラストもれおくんのラストも選べないくらい素敵な素敵なラストでした。何度読んでも大好きなお話です(^^) (2018年2月23日 22時) (レス) id: 05e37e8b83 (このIDを非表示/違反報告)
mugi(プロフ) - おんもしろかったです、玲於くん、私得でした。 (2017年12月26日 1時) (レス) id: 4db51b5e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2016年10月28日 22時

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