切なさ ページ28
Aside
次の日から、
お隣はいつも以上に騒がしくなって、お引越しの準備をしてるのが嫌でもわかってしまう。
佐野くん家、あんまり物ないし
たぶんわたしが手伝わなくても大丈夫なんだけど…
…だってもう、会えないんだよね。
お引越ししちゃったら、きっともう佐野くんは会ってくれない。
わたしも臣くんを待っている身で
こんな気持ちのまま佐野くんに会うわけにもいかないし。
だから、本当に最後だから
…最後くらい…
___＿ピンポーン
20時を少し過ぎた頃
お隣のインターホンを鳴らした。
急いで作った肉じゃがと、インスタントのスープだけ持って。
玲於「はい、…って…なに。」
わたしのこと見て、あからさまに嫌な顔してる。
…ダメダメ。
ここでいじけちゃ、やってけない。
A「お引越しの準備で忙しいかなーって思って。晩ごはん持って来てあげたよ。」
玲於「…頼んでない。」
A「…じゃあいらない？」
玲於「いらない。」
A「……おじゃましまーす。」
めげない。
最後くらい、笑ってたいもん。
どうせ会えなくなるなら いい思い出で終わりたい。
…なんて、そんなこと思ってたのに
玲於「…超汚ないけど。」
…ほんとに、引っ越しちゃうんだ。
リビングにはたくさんダンボールが転がってて
ソファーの横のごちゃごちゃしてた小物たちも、姿を消してて
…どうしよう、悲しくなってきた。
玲於「……なに作ってくれたの。」
A「…肉じゃが。」
玲於「…だけ？」
A「……スープ。」
玲於「スープ？」
A「…インスタント。」
玲於「インスタントかよ。笑」
…こんなときにも、佐野くんは優しい。
気遣わせに来たんじゃないのに
ほんと、バカだなわたし。
玲於「…まあちょうど腹減ってたし…食べよっか。」
A「…うん。」
ダンボールに囲まれて
たぶんこれが、一緒に食べる最後のご飯。
いろんな思い出が蘇ってくる。
4年間の、佐野くんとの思い出。
A「……初めて一緒にご飯食べたの、覚えてる？」
聞くと、もぐもぐしながらわたしのこと見て
玲於「…お前が、怖いテレビ見たいけどひとりじゃ無理だからって。」
A「…忘れてると思った。」
玲於「……忘れるわけないでしょ。」
思い出話って
懐かしさだけじゃない
切なさも運んでくる。
．
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はなこ(プロフ) - 号泣しながら何回も読んでます。佐野くんが報われてほんとに幸せです、佐野くんラストを作ってくださってありがとうございます（ ; ; ）三色スミレもそうですが、きなこさんのお話どれも大好きです。ほんとに本出してほしいです（笑） (2020年3月25日 17時) (
レス) id: 7f49a4f7b8 (このIDを非表示/違反報告)
まなみ(プロフ) - やばいです（ ; ; ）一気に読みました。臣くん玲於くんが好きなので、めちゃくちゃキュンキュンしたり、切なくなったり。玲於くんオチが良かったのでアフターストーリー読んでみたいです！ (2019年9月15日 20時) (レス) id: 4674ba14b6 (このIDを非表示/違反報告)
よしのちゃん(プロフ) - 突然読みたくなって一気に読み返しました。きなこさんの作品はいつみても素敵な作品しかなくてほんとに大好きです。感動する作品をいつも有難う御座います..！ (2019年5月31日 20時) (レス) id: c95bcff958 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - 三色スミレ、大好きなお話です。細かい部分まで書かれていたり、言動も本物みたいで。きなこさんは本当にすごい方です。おみくんのラストもれおくんのラストも選べないくらい素敵な素敵なラストでした。何度読んでも大好きなお話です(^^) (2018年2月23日 22時) (レス) id: 05e37e8b83 (このIDを非表示/違反報告)
mugi(プロフ) - おんもしろかったです、玲於くん、私得でした。 (2017年12月26日 1時) (レス) id: 4db51b5e5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きなこ
| 作成日時：2016年10月28日 22時
