三色スミレ 特別編

さみしい ページ3

Aside






A「臣くん？ごめんなさい、仕事中？」


広臣『あー、うん。どした？』





電話の向こう、騒がしくって

…早く切らなきゃ。





A「…ごめんね、なんでもない。」


広臣『…なに、元気ないじゃん。』


A「ううん、そんなことないよ。ほんとに。」


広臣『…そ？』





…迷惑かけちゃダメ。


臣くん、お仕事頑張ってるから、

力になりたいし

頼られたい



だから、重荷になっちゃダメ。






広臣『あ、そういえばさ。出張三日間伸びたんだよね。』


A「え？」


広臣『幹部に頼まれちゃって。』


A「…そっか。」





…また3日間、会えないんだ。





A「…臣くん、実はね。」


広臣『ん？』


A「…実は、わたし…」





異動のこと、話そうと思った。


先送りにしすぎるの、よくないし

なんだか今なら言える気がしたから




…でも





A「わたし…」


広臣『あ、ごめん。チーフに呼ばれた。明日でいい？』


A「…あ、うん。ごめんね。」


広臣『いや俺こそごめん。…また明日ね。』


A「うん。…おやすみなさい。」





わたしが全部言い切る前に

ツー、ツー、って

通話終了の音が聞こえた。




…臣くん、忙しいんだよ。


わかってる。

仕方ない。




けど

やっぱりさみしいよ





そばにいてほしい

抱きしめてほしい



臣くんが好きだから、そう思うのに。





明日帰ってきてくれるって

それだけで頑張れてた。


異動になっても

佐野くんとの距離が開いても


臣くんのためだから、って。




それなのに…






涙が出そうになったの

唇噛んで、必死にごまかす。



…片想い、みたい。





嫌な気持ちを消し去りたくて、ベランダに出た。


我慢してるはずなのに、ポロポロ出てくる涙




…さみしいよ









玲於「…A？」





そのとき聞こえた声

間仕切り板の向こうから、佐野くんが覗いてた。



…いたんだ、恥ずかしい。






A「…ごめん…」


玲於「いや…」





流れる気まずい空気


…臣くんのことで寂しくて、なんて言えるわけないし。





玲於「……ほんと、よく泣くね。Aって。」


A「…うん。」


玲於「…なに？広報部でいじめられた？」


A「…違うもん。」


玲於「…腹減った？」


A「…それも違う。」


玲於「……じゃあ、臣さんか。」





佐野くんの声が優しくて

どうしても涙が止まらない。



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