三色スミレ 特別編

考え事 ページ19

Aside






臣くんのマンション

インターホン鳴らしたら、出迎えてくれた臣くん すごくびっくりしてて。


土曜日に来るかと思ってたんだって。





広臣「電話くれたら迎え行ったのに。」


A「ううん、タクシーで来たから平気。」


広臣「タクシー？」





バス探すのめんどくさくて

ついタクシーに乗ってしまった。


でも2000円しなかったし…





広臣「はい、」





そんなこと考えてたら

リビングに入った臣くん、自分のお財布から五千円札出して渡してきた。





A「ちょ、いらないよ。」


広臣「俺が来てって言ったし。」


A「…わたしもう、社会人だよ？」





…たまに思うけど、臣くんから見えてるわたしって

すごく幼い気がする。



たぶん、従兄妹のAちゃんから抜け出せてない。



…悲しいから、本人には言えないけど。





A「晩ご飯食べた？作るよ、わたし。」


広臣「まじ？じゃあお言葉に甘えて。」





手洗いして キッチンに立つ。

ここのキッチンはとても広くて、2人で立っても余裕なの。


わたしの部屋のキッチンは まあ一人暮らし用だから仕方ないけど、1人でも窮屈。




佐野くんと一緒におうちごはんするとき

佐野くん、わたしが作ってたらたまにちょっかい出しに隣に来たりしてた。

ほんとに狭くて危ないからやめてほしかったな。





…こういうのも、最近はめっきりなくなっちゃったけど。




もしこのまま上手くいって、臣くんと結婚できたら

佐野くんはお隣さんじゃなくなるよね。


ふたりだけで会うことも、難しくなるよね。




…友だち

そう佐野くんは言ったけど


わたしは今、佐野くんのことを友だちだって思えてるかな。




友だちだったら

顔を見るだけであんなに苦しくならないかな。




…今までわたし、どんな気持ちで隣にいたかな。








広臣「A？」





わたしを呼ぶ臣くんの声

一瞬で我に返って、顔を上げる。




A「…あ、なんだっけ。」


広臣「手伝うことある？…って、聞いたんだけど。なに、考え事？」


A「…えっと、…うん、何作ろうかなって。」


広臣「そ？…なんかあったかなー。」





そう言いながら 冷蔵庫開けてる臣くん。


その横顔があまりに綺麗で 思わず見とれてしまった。





…この人が、わたしの好きな人で


この人が、わたしが幸せになる道で








…間違ってないよね？


わたし、このままでいいよね？





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