三色スミレ 特別編

電話 ページ17

Aside






次の日の朝



少し早めに朝ごはんを食べて

少し早めに家を出た。




別に佐野くんと待ち合わせしてるわけでもないし

乗るバスだって違うけど、でも、気持ち的に。




ひとりは寂しいけど

最近の出来事を振り返ってたら、ちゃんとしなきゃって思ったの。



このままの距離じゃダメだよ

…臣くんのこと、裏切れない。









営業部にいた頃は、こんな時間に着いたら絶対今市さんがいて


携帯ゲームしながらおはようって言ってくれてた。




けどまあ、分かってたけど

岩田さんはいつもギリギリに来る人だから、フロアには数人しかいなかった。









最近の悩みは


家の鍵かけたか忘れちゃうことと

友だちがいないこと




どっちも大変な悩みだけど

どちらかというと 家の鍵の方が問題かも。






〜♪




そんなことを考えていたら

鞄の中で携帯が鳴り響く。



慌てて取り出してディスプレイを見ると、臣くんからだった。




…異動のことだ。





休憩室に走って、通話に切り替える。

少し緊張しながら耳に当てると





広臣『A、どういうこと？』





第一声からもう怒ってて


…でも、ちゃんと言わなかったわたしが悪い。






A「…ごめんなさい。」


広臣「ごめんなさいじゃ分かんねえから…」






ちゃんと、一から全部説明した。


わたしが部長に臣くんとのこと問い詰められて

それを佐野くんが庇ってくれて


それで今、わたしは広報部

佐野くんは経理部にいるんだよ、って。






A「…言わないで、ごめんね。」


広臣『……玲於は、』


A「…部長にほんとのこと言いに行こうとしたんだけど、行かなくていいって…」


広臣『…そっか。』





臣くんの立場、複雑だよね。


わたしたちが勝手にしたことだけど

訂正するのも今さら遅いし



だからって簡単に受け入れるのも違う気がするし






A「…臣くんに、お仕事頑張ってほしかっただけなの、ごめんなさい。」


広臣『…わかるけど、玲於は…』






何か言いかけて

やっぱ電話するわ、って。



…佐野くん、後悔してないかな。


わたしなんかのこと庇ったりして

やっぱやめときゃよかった、って 思ってないかな。





広臣『…A？』


A「…あ、ごめん…なんか言った？」


広臣『……直接話したいことあるから、週末うちおいで。』







このお誘いにも罪悪感を感じてしまうなんて

わたしって、ほんとにダメだ。



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