三色スミレ 特別編

嘘つき ページ14

Aside





剛典「ねえ昨日隆二さんとご飯だったんでしょ？」




そう岩田さんに言われたのは

昼休憩が終わって、眠気と戦っていた午後のこと。





A「あ、はい。」


剛典「ねえ誘ってくれてもよくない？笑」


A「…だって今市さんが2人って。」


剛典「…隆二さん絶対Aちゃんのこと好きじゃん…」





つまんなそうな顔しながら、そんなこと言ってる。





A「違います違います。…大事な話だったんです。」


剛典「大事な？…ふーん…」




納得したのかしてないのか

唇尖らせながらまたパソコンに向き直った岩田さん。


その横顔が可愛くて、思わず笑ってしまう。





剛典「…なに、人の顔見て笑って。」


A「ごめんなさい、可愛くて。笑」


剛典「…かっこいいが嬉しい。」





なんですかそれ、なんて言ってお喋りしながら仕事を進める。


岩田さんモテるから、あんまり仲良くしすぎると周りの目が痛いけど…






A「終わったあ、」


剛典「おつかれ〜」





ようやく今日のノルマを達成して

ふうって息つきながら窓を見ると、もう真っ暗。


ちょっと時間かかりすぎちゃったかも。




お先に失礼しますって頭を下げて、バス停まで歩いた。




今日の晩御飯、何にしようかな。

最近サボってばっかりだったから、久しぶりに自炊しよう。



そんなこと考えながら

最寄駅でバスから降りる。






…そういえば臣くんに電話かけ直すの忘れてた。



どうしたの？って聞かれたら、なんて答えよう。


佐野くんの部屋にいて

佐野くんが出るなって言ったから？



…ダメダメ。

ダメだよ。




さすがに言えない。






…はあ、どうしよう


考えなきゃいけないことが多すぎる。




パンクしそうなんて思いながら

アパートの階段を登った。




まだ19時なのに、辺りは真っ暗。

…冬だなあ








玲於「…おっせーよ、嘘つき。」







そんな声にびっくりして顔を上げる。


目線の先には、わたしのドアの前にしゃがみ込んでる佐野くんの姿。






A「ちょ、なにして…って、…嘘つき…？」






不機嫌そうな顔して、わたしのこと見上げてる。






玲於「……嘘つき。」


A「…なにが…」


玲於「…昨日迎えに来てくれたんでしょ。なんで言わねえの。」





よいしょ、って立ち上がって

ポケットに手突っ込んだまま わたしの方へ詰め寄ってきた。






…だってそんなの、言えるわけないじゃん。



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