実家 ページ38
広臣side
風が強くて、どんよりとした曇り空
覇気のないその天気をフロントガラスから見上げて、ため息をこぼした。
それでも家に着く頃には太陽は沈んで
辺りは真っ暗。
最近日落ちるの早くなってきたな、
…夏が終わるんだ。
またひとつ、Aと過ごした季節が消える。
こんなことを考えてしまうのは
この先の未来を、まだ俺が疑っているからかもしれない。
…まずいな、このままじゃ。
マンションの8階
鍵を開けて部屋に入り、ソファーに座った。
目線の先には、Aとお揃いで買ったボールペン
…思い出がつらいなんて
Aに出会って初めて知ったよ。
〜♪
そのとき鳴り響く携帯
ディスプレイには、母ちゃん、の文字
…やっぱ来たか。
ふうって息吐いて、携帯を耳に当てた。
広臣「…はい、」
『広臣？今、家？』
広臣「うん、」
『そう、突然だけど、今週末ちょっと帰って来られない？』
…ほんと、突然じゃん。
広臣「…いいけど、なんで？」
『見せたいものがあって。早い方がいいから。』
広臣「見せたいもの？」
『何時でもいいから、来なさいよ。』
それだけ早口で言って
切られた電話。
…まあ母ちゃん、普段からこんなんだけど。
知ってんのか
知らないのか
よく分かんねえまま。
見せたいものがある、って
なんだろ。
とりあえず今週末は実家に帰ることにして
Aへの報告はその後でいっか。
．
隆二「臣〜〜、今日飲んで帰ろうよ。」
約束の、週末。
19時を回った頃、隆二がそう言いながら俺のデスクまで来た。
広臣「あー、ごめん。今日実家帰んだ。」
隆二「実家？なんで突然？」
広臣「なんか母ちゃんが見せたいものあるって。」
隆二「見せたいもの？…なんだろ。」
広臣「…とりあえず行くわ。早めがいいって言ってたし。」
隆二「そっか。泊まんの？」
広臣「いや、夜には帰る。」
そっかって頷く隆二と一階で別れ、駐車場に向かった。
ここから実家まで1時間半
暗くなった空を見上げながら、車を走らせる。
広臣「ただいま、」
「あら、おかえり。」
いつもの笑顔で出迎えてくれる母ちゃん。
…ほんとに知らないのかも。
だとしたらなんで
紘子おばさんはAの母さんだけに言ったんだよ。
…よくわかんねえな。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1637人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
モモ - 佐野くんと結ばれてほしい〜〜がんばれ！さの！いけ！さの！ (2016年9月26日 20時) (
レス) id: 610f698085 (このIDを非表示/違反報告)
#あると - 久々コメントします!いいですねいいですね。どんどん面白くなっていて、受験生だっていうのにずっと読んでます笑佐野くんがついに動きそうですね!がんばれ佐野くん!どんな終わりになるのか楽しみです! (2016年9月26日 16時) (レス) id: 2cfa8e7768 (このIDを非表示/違反報告)
りり - これって佐野くんと結ばれてしまうのかな…
臣くんにがんばってほしいなぁ… (2016年9月26日 7時) (携帯から) (レス) id: b12524bc32 (このIDを非表示/違反報告)
れい - 佐野くん！！！！！！佐野くんの想いが報われるように祈ってます（；＿；）素敵です佐野くん！がんばって！ (2016年9月26日 2時) (レス) id: 2c5990e7ad (このIDを非表示/違反報告)
れん - 佐野くんー（ ; ; ） やっと佐野くんの想いが伝えれる..！とっても感情移入しちゃってます（ ; ; ）すごくどハマりしてて通知なくても見に来ちゃいます！佐野くん頑張れー（ ; ; ） (2016年9月26日 1時) (レス) id: fcd0123266 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きなこ
| 作成日時：2016年9月4日 20時
