三色スミレ5【臣×玲】

優しい ページ16

Aside






その日の夜


食欲がなくて、テレビ見ながら棒アイスを一本食べて もうお風呂に入って寝ようかな、なんて考えてた。




何をするにも気力がなくて




……そろそろ死ぬんじゃないか、

なんて バカみたいなこと考えたりもして。






ほんと、心が弱いなあ



昼間男の子たちに言われたこと、結構響いてたりするかも。


…佐野くんが助けてくれてなかったら

今ごろ大泣きだな、コレ。






アイスのゴミ持って

キッチンのゴミ箱まで行こうと ソファーから立ち上がった。





スーツ姿のままだ、わたし。

だらしないな。





ぼーっとそんなこと考えながら歩いてたら

ソファーの横に置いてた扇風機、そのコードにひっかかって 思いっきりこけてしまった。



その勢いで、おでこを壁に強打。



ゴンって、鈍い音がして









A「いったあ…」









あまりの痛さに、そのまましゃがみこむ。



切れてないよね？

血、出てないよね？




…ああもう

なんでこんなに、ついてないんだろ。







おでこ両手で押さえながら

泣くな泣くなって、自分に言い聞かせてた。








そのとき









___ドンドンドンッ






玄関のドアを叩く、そんな音









「A！」









A「……佐野くん、」







玄関の向こうから確かに聞こえたその声に

我慢してた涙が溢れてくる。






…なんで、来たの？







ガチャってドアが開く音がして

ああまた鍵閉めるの忘れてたって思い出す。





A、

そうわたしの名前を呼びながら リビングに入ってきた佐野くん。






…お風呂上がりかな

髪濡れてる。








しゃがみ込んでるわたしを見つけて

目見開いて








玲於「どうしたんだよっ、」








言いながら、目線合わせてしゃがみ込んで


わたしが両手で押さえてるおでこにそっと触れた。








A「……コード、ひっかかって…こけて…」


玲於「…壁で打った？」


A「……音、した？」


玲於「うん、ゴンって。」







心配させんなよ、なんて言ってるけど


…こんなので駆けつけてくれる人

佐野くんしかいないよ。








玲於「……痛かった？」








眉間にシワ寄せながら

まるで、自分の怪我みたいに 優しく触れる。









玲於「…赤くなってんじゃん、…バカ。」








言いながらわたしを抱きよせたその逞しい腕は


きっと、今までで一番優しい。



．

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