三色スミレ5【臣×玲】

この先ずっと ページ15

Aside






事件が起きたのは、それから暫く経った ある日のお昼。




その日はお弁当を作る時間がなくて

給料日前でお財布もキツかったし、仕方なく社食で済ませようと決めていた。




相変わらずひとり。

寂しいけど、曽田さんたちの女子トークを聞くほど元気もないし…





一番隅っこの席に座って

明日訪問するクライアント先の情報なんかを眺めながら、頼んだサラダランチを食べてた。








「あれ？」







ぼーっと資料を見てたら上からそんな声が聞こえてきて、思わず顔を上げる。







「この子、玲於と仲いい子だよね？」


「あ、そうじゃん。」






同期の男の子が何人か

そして、その後ろから顔を出す佐野くん。



目が合ったのなんてほんとに久しぶりで

気まずくて思わず俯いた。






「なんで一緒に食べてやんないの？玲於。この子ぼっちじゃん。」


玲於「……べつに。」






…そうだよ、だって、わたしがそうしてって言ったんだもん。


佐野くんは悪くない。







「えーなに喧嘩でもした？」






その一言で、わっと盛り上がってる。

…勝手なこと、言わないでほしいけど。






「この子、可愛い顔して実は中身黒いとか！笑」


「最近そういう子多いじゃん？人は見た目によらないって言うし。笑」


「玲於も言い寄られてたんじゃ、」






玲於「やめろよ。」









そんな罵声を止めたのは

紛れもない、佐野くんの声だった。




泣きそうになるの我慢して顔を上げると

わたしの目、はっきり見つめながら







玲於「…こいつは、そんなことするヤツじゃない。」







それだけ言って

背を向けて歩き出す。




え？キレた？って

慌てて佐野くんの後を追いかけてく男の子たち。








…ずるいな、佐野くん。




なんでこんなときに優しくするの？




いつもそう。

わたしが弱ってるときに限って、優しくしてくれるの。




今だって、いっそのこと無視して突っぱねてくれたらよかったのに。









佐野くんがいない毎日がこんなにもつまらないなんて

2週間前のわたしは知らなかった。









今まで通りでいいって言う、臣くんの声を思い出す。









…この先ずっと、こんなことを考えながら生きていくのかな。







佐野くんのことを 胸を張って友達だって言えた頃がどれだけ楽しかったか




…戻りたい、戻りたいって









ずっと、こんなことを考えながら。





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