三色スミレ5【臣×玲】

色仕掛け ページ1

広臣side






「登坂くん、今日は車？」


広臣「いえ、」


「あらそう。じゃあたくさん飲めるわね。」





ワインを、と告げる

お上品な口調。





髪を耳にかける仕草

…なんで、結婚指輪してねえの？





はあ 勘弁してよ






広臣「…先日はとてもご丁寧に対応くださってありがとうございました。」


「あなたがあんまり素敵な男性だったから、わたし見惚れちゃったわ。」


広臣「そんなことないですよ。」


「あら、謙遜してるの？わたしに気に入られて上手くいかなかったことないわ。…色々とね。」






…色々と、か。


俺の出方次第でこの契約も決まるって言いたい？



古いやり方じゃん

こういうの久々だわ。






「それにしても、素敵なお店を知ってるのね。」


広臣「料理もきっとお気に召して頂けると思います。」


「…登坂くんの声、素敵だわ。」






まずいな

こういう空気にはなりたくないのに。





テーブルに頬杖ついて、俺のことを見上げる副院長




…既婚者が、なんて顔してんだよ。







タイミングよく仲居さんが料理を運んでくれて

話題も移る。



ワインを嗜みながら過ぎる時間

すげー長く感じて






「あら、もうこんな時間。登坂くんといると 時間が早く感じるわ。」


広臣「…ほんとですね。」


「それにしても酔わないのね、たくさん飲ませたつもりだったけれど。」






酒には強い俺だけど

さすがにボトル2本近く飲まされたんじゃ、頭の中クラクラで。



それでもこうして理性を保ってられるのは

副院長が席を外すたびに、携帯取り出して彼女の写真見て…


絶対酔うな、理性飛ばすな

って 言い聞かせてるから。





酒に飲まれてあっちの手玉に取られたんじゃ、たまったもんじゃねえよ。



まあ向こうはそれを望んでるんだろうけど。








「…登坂くん、送ってくださる？家は少し窮屈だから、できればカールトンまで。」






…カールトンって、ホテルのこと言ってんの？






広臣「…お送りします。」






仲居さんに頼んでタクシー呼んでもらって

フラつく足元をなんとか抑えながら個室を出た。






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