三色スミレ【臣×玲】

失恋 ページ37

Aside








失恋、なんて


初めて経験した。






今までずっと臣くんが好きだったから


臣くんしか好きじゃなかったから





だから







これが初めての、失恋






たぶん、最初で最後









いつか、失恋した友だちがいて





失恋って、そんなに苦しいのかな

そんなにつらいのかな




なんて

大泣きするその姿を眺めながら思ってた。









ああ、今ならわかる


今ならきっと、優しく抱きしめてあげられる








この歳になってやっと、


" 好きな人に好きな人がいる "


苦しさを知ったの。









体の水、無くなっちゃうよ

早く泣き止まないと、目腫れちゃうよ




思ってはいるけど 止まらない涙。









わたし、この先どうやって…









___ピンポーン








そのとき鳴ったインターホン





どうしよう。


こんな顔じゃ出れない。









玲於「A、いんでしょ。開けて。」








ドア越しに聞こえたの、佐野くんの声だった。









A「…あとでじゃだめ？」


玲於「開けて。」


A「佐野くん、」


玲於「A、大丈夫だから。」









佐野くんはたまにこうやって、優しい言葉で。



わたしが弱いの知ってて、そんな風に言うんでしょう？









ガチャ、と

ゆっくりドアを開けた。









玲於「……ひとりで帰んなよ。心配すんだろ。」


A「…ごめ、ん…」








佐野くんの顔見たら、なんだか安心しちゃって

また涙が出てくる。



せっかく我慢してたのに。








玲於「…ほらコレ。お前の。」








言いながら、今日貰ったホームベーカリー

玄関に入れてくれた。





ありがとう、も、言えない

涙堪えるのに必死で。









玲於「…で、なんで泣いてんの？」


A「……なんでも、ない。」









佐野くん、気付いてないのかな。



わたし、臣くんと彼女見てお店飛び出したのに。









玲於「……なんでもいいけど、パフェ残してきちゃったじゃん。」


A「…ごめん。」


玲於「……今度リベンジね。」









パタン、と

閉められたドア。








……気づいてないわけない。


気づいてて、言わないんだ。









優しさ？



それとも、軽蔑？





．

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