魅惑のマーマレード2【登坂広臣】

ニオイ ページ37

広臣side







広臣「あいつ絶対忘れてるし…」






なにがとりあえず切るね、だよ

とりあえず切るねって言った場合は5分以内にかけ直すのが常識だって母ちゃんに習わなかったのかよ。






かれこれ20分近く経ってんすけど！


もしかして家に帰ってからかけ直そうとか呑気なこと考えてる感じ？


だとしたらあと15分くらい待つことになるわ。





まあ俺もまだ帰れねえし、つーか今事務所だし。

なんなら待たせて一緒に帰ればよかった。





なんて思いながら、自販機からミネラルウォーターを取り出す。








剛典「どうしたんすか？顔めっちゃ険しいっすよ。」







後ろからそう声をかけてきたガンちゃん。

窓も何もないリハ室でずっと踊りっぱなしだったから、汗ダラッダラ。






広臣「…なんか久しぶり…」


剛典「え？笑 朝からずっと会ってますけど笑」


広臣「いや、こっちの話。」


剛典「そうっすか？あ、さっき隆二さんが探してましたよ。」


広臣「隆二？」


剛典「はい、トイレから帰ってきたと思ったら、臣いる！？って。」






…なんだろ。


なんていうかまあ、とりあえず良い予感はしなくて。


小走りでリハ室に戻った。







隆二「臣！」


広臣「ごめん、自販行ってた。どした？」


隆二「あのさ、今日の昼さ、松田さんのこと話してたじゃん。Aちゃんと知り合いの。」


広臣「あー、うん。」


隆二「さっきトイレ行くついでに、レコーディングルームに忘れ物したから上まで行ったんだけど…」







確か、レコーディングルームと広報部の資料室って、同じ階にあった気がする。






隆二「電話しててさあ、松田さん。ちょっと聞こえちゃって。」


広臣「なんて？」


隆二「またタクシー乗ったのかよ、気付かれてたらマズいから、とりあえず時間置こう…って。」






……タクシー？

時間置こう？






広臣「ごめん、全っ然意味わかんねえんだけど。」


隆二「俺も分かんないんだけど、とりあえず松田さん情報だから。笑」


広臣「ん。ありがと。」







Aに関わってても関わってなくても

とりあえずなんかヤバそうなニオイする。







健二郎「松田、って広報部の？前あいつ、一回会議入ってたことあるなあ。」


広臣「え、覚えてる？」


健二郎「まああれから色々聞いたしな。」


広臣「色々って…」


健二郎「……ええ話では、ないけどな？」




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