魅惑のマーマレード2【登坂広臣】

レコーディングルーム ページ26

Aside







A「…失礼します…」






丁寧にドアを開けてくれた隆二さん。


ぺこっと頭を下げて、恐る恐る足を踏み入れた。









と、同時に閉められるドア。






びっくりして振り向くと、ガチャガチャ音がして

外側から鍵をかけられたのが分かる。









さっき握りしめてたの、鍵だったんだ…








A「隆二さんっ、開けてください！」







ドアに付いてる細長い防音ガラスから訴えかけるけど、ニコニコしたまま無視。




隆二さん！って何度も叫んでたら

ポケットから携帯を取り出して。





" 防音だからなにも聞こえないよ！ "





と入力した画面を見せてきた。









……意味わかんないよ…








はあ、と肩を落としたとき







．








「誰？」









奥からそんな声が聞こえて。



近づいてくる足音。





恐る恐る後ろを振り向くと









A「……臣さん、」


広臣「え、なんでいんの？」








そこにいたのは、驚いた顔してる臣さんで。







A「隆二さんに連れてこられて、入ってって言われて、そしたら…」


広臣「は、ドア開かねえじゃん。」


A「鍵かけられた。外から。」






隆二さん、右手上げて

じゃあね、のポーズをしてどこかへ行っちゃった。








広臣「あいつどういうつもり？まじで。」


A「わかんないけど…超ニコニコしてた。」


広臣「なんか企んでんな。」


A「企んでる。」







チラッと奥を覗くと


ソファーとかテーブルも置いてあるし

もちろんマイクスタンドとか、音響の機械もたくさんあるけど


すごくリラックスできる造りになってた。






初めて見る…









A「……わたし入っちゃっていいのかな。」


広臣「え？…ああ、それはいいけど…」


A「臣さんここで何してたの？」


広臣「歌入れ。」


A「ふうん…」


広臣「…けどまあ、うまくいかなくて。」


A「そうなの？」


広臣「うん。延ばしてもらった。…すげー迷惑かけてんだよね。あー、頑張んねえと…」







お仕事してる臣さんは、いつもよりかっこよくて。



悩んで、苦労してるその姿は

とても頼もしく見えた。








A「……頑張って…しか、言えないけど…頑張って。」


広臣「……ん。さんきゅ。」






．

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