魅惑のマーマレード【登坂広臣】

苦味があるから ページ15

広臣side








目がさめると、すげーいい匂いがして。






なんだ…？





上体起こしてキッチンの方振り向くと








A「あ、起きた？おはよう。」








って、エプロン姿のA。





…そっか、俺泊まったんだっけ。









広臣「おはよ。」


A「パン焼けちゃうから、早く起きて。」


広臣「ん。」








あーこれパンの匂いか

って、寝ぼけた頭で理解する。









洗面所に行って、顔洗って歯磨いて

もう一度リビングに戻ると 焼きあがったパンにマーマレード塗ってるA。









広臣「あー待って待って。俺のつけないで。」


A「うん、つけてない。」


広臣「…なんでそんなん好きなの？わかんねえわ。」


A「えー美味しいじゃん。」









満足に塗り終わって、いただきますって手合わせてる。





パンと、サラダと、スープにオムレツ。



こいつたぶん 毎朝このメニューなんだと思う。









A「んー、美味しい！やっぱり臣さんがくれたマーマレードが一番好き。」


広臣「変わんの？味。」


A「うん、全然違う。」


広臣「ふーん。」









普通にバター塗って食った方が美味しいと思うけど。









A「なんだろーな、このさ。甘いのと苦いのが一緒になってる感じ？すごく好き。」


広臣「……甘いのだけでよくね？」


A「違うよ、それじゃダメ。苦いのがあるから、甘いとき幸せに感じるの。」









苦いのがあるから、


甘いとき幸せに感じる









……マーマレードって、Aみたいだ。









なかなか俺の方向いてくれないから、


ちょっと近づけただけですげー嬉しくて。









A「……ん？どうしたの？」


広臣「…べつに。俺にもちょうだい。マーマレード。」


A「うん、いいよ。」









パンに少しだけ乗せて食べたそれは


俺にはやっぱり、苦みが強く感じて。









……まだまだ、ってことか？









もっと甘さを感じたいって



そんな独りよがりな欲。







Aは俺からの一方的な愛情なんて

受けてたって意味ないのに。









それでも、この太陽みたいな笑顔のためだったら


自分の気持ちなんていくらでも犠牲にできる。









だから、そばにいさせて欲しい。







．









" ちょっとめんどくさい、わたしのことが好きな人 "





ってポジションでいいから。

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