魅惑のマーマレード【登坂広臣】

なんで？ ページ12

Aside









A「……うわあ、ほんとに点検中じゃない…」








19時



仕事を終えて、ちらっと第一エレベーターを覗くと

当たり前のように作動していた。








うわー、

なんだろ。感激。







るんるんな気分で第二エレベーターに向かい

一階に降りた。







外はもう暗くって、寒い。


満員電車に乗って最寄駅で降り、家まで徒歩15分。







12階建てマンションの5階

その突き当たりがわたしの部屋。








A「ふう、ただいまー。」







返事が返ってこないのにはもう慣れたけど、

今から晩御飯を作らなきゃいけないっていうのが億劫で仕方ない。







料理、下手なんだ。


もちろん練習はしてるけど

なかなか上手にならないし、レパートリーだって少ない。







A「……はあ、何を作ろうか…」







冷蔵庫開けて、今ある食材をチェック。


うーん…









A「……親子、丼…」









それなら作れるかも。



そう思いながら、エプロンの紐を締めた時だった。









___ピンポーン









玄関のインターホンが鳴る。









もう、こんな時間に誰？



隣のお節介なおばさんかも。


いっつも何かと怒られちゃうの。


ベランダのお花、枯れてるわよ！とか。

勝手に覗かないでほしいな。









A「はあーい。」








小走りで玄関まで行って、その扉を開けた。



ぱっと顔を上げると









A「え、なんで…」


広臣「よ、飯食わせて。」









昨日会ったばかりの臣さんが、コンビニの袋下げて立ってた。








A「仕事は？」


広臣「終わってなかったら来ないでしょ。」


A「なんで来たの？」


広臣「だめ？」


A「…だめじゃないけど…」









じゃあいいじゃん、って言いながら

リビング向かってる。








A「ご飯…わたしが作るの？」


広臣「当たり前じゃん。笑」









嫌だな。下手なのに。




腹減ったーってぼやいてる臣さん。

袋から取り出した缶ビールを慣れた手つきで冷蔵庫に入れてる。









広臣「いいよ、不味くても。Aの手作り食べたいだけ。」


A「……ほんとに？」


広臣「ほんと。」









優しく微笑みながら

わたしの頭ぽんってして、キッチンから出てった。









……世の中の女の子だったら、今のでイチコロかも。





なんて、身分不相応なこと考える。

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