60.残り香 ページ30
・
あたしは、もうあの頃とは違う。
こんなこと、許される立場じゃない。
あたしには、雅紀がいる。
何も言えないままのあたしに
大野くんが「玄関開けた時点でわかってたでしょ？」って言う。
わかって…いた、かもしれない。
そんなわけない、とは言えなかった。
「お願い、帰っ」
智「好きだったよ俺」
「え……？」
智「卒業の後、抱いた日。
俺、貝塚のこと、…Aのこと、好きだった。」
「……うそ、そんなわけ、」
智「同窓会で結婚したって知ってさ」
あたしの左手を持ち上げて、そっと薬指のそれに触れる。
智「すっげぇ腹立ったんだよね」
聞いたことのない、低い声。
何も言わず、この決して広くはない部屋で
寝室を探し当てるなんて容易いことだった。
リビングの光だけがうっすらと差し込む、中途半端な暗闇の寝室。
智「ほんとにイヤなら、逃げれば良いよ」
「きゃっ」
強引に、押し倒されたベッドが軋む。
呼吸すら出来ないほどの激しいキスは苦しくて
するりと入り込んだ舌が舌を絡め取ったら、口内を容赦無く犯 していく。
「んん、ぁ、…」
ダメだと、思い切り突き放さなきゃダメだと、
頭では分かっているのに
しっかりと反応する身体が悔しい。
ちゅ、と音を立てて離れた唇がそのまま首筋に動く。
あたしだけじゃなくて
大野くんも、あの頃とは違っていた。
もう、オトナのオトコノヒトだった。
ベッドのシーツから香る、雅紀の残り香が
あたしを責めているような気がした。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 497人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
知日(ともび)(プロフ) - みなちゅんさん» うれしいです！ありがとうございます！！楽しみにしていてください♪ (2017年8月14日 13時) (
レス) id: 2df8e76a2f (このIDを非表示/違反報告)
みなちゅん(プロフ) - こんばんわ、新作もまた読みにきてしまいました^ ^ また更新楽しみにしております！！ (2017年8月14日 0時) (レス) id: cc7a2757c6 (このIDを非表示/違反報告)
知日(ともび)(プロフ) - *-eni-*さん» eniさんさっそくありがとうございます！！！ウイスキーを飲んだ後の智でございます、うふふふ(*´ω｀*) (2017年8月8日 23時) (レス) id: 2df8e76a2f (このIDを非表示/違反報告)
*-eni-*(プロフ) - |qд･.)おじゃましまぁーす(笑) おトイレから出たらさとぴがいたー！お迎えは来れないみたいだし……どーなるのかなぁ！？(*´艸｀*) (2017年8月8日 23時) (レス) id: aaada8bfdf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：知日(ともび)
| 作成日時：2017年8月8日 10時
