57.ー重なる影ー ページ27
・
そんなつもりじゃなかった、と
叫べば嘘になるかもしれない。
進む道の途中、少し、気付いたのに気付かないフリをしたのはあたしだったから。
慣れた様子で受付をして、エレベーターに乗り込んで、部屋の扉を開ける。
誰かと、来たことがあるんだろうか。
扉が、バタンと音を立ててしまった直後に離された手首は
少し痛みを伴っていて、ほんのり赤くなっていた。
智「ごめん、痛かったね手」
「っ、」
今度は、優しく触れたそこ。
さっきまでの、強引な素振りはどこへ行ったのか
間近で見上げると、男の子のくせに長い睫毛が
薄暗く、なんとも言えない色を纏う部屋の照明で影を作っていた。
智「嫌なら、」
「え…？」
智「逃げて良いから」
卑怯な人だと思った。
全部
ここに来ることも、ここに来てどうするのかも、あたしに選ばせるのね大野くんは。
さっきとは違って、優しくゆっくり
奥の、大きなベッドへと誘われる。
胸の鼓動が、耳で聞こえて、脳にまで響くほど暴れていた。
大野くんの手にあったあたしのコンビニの袋は
ベッドサイドの小さなテーブルに鍵と一緒に音を立てて置かれた。
大野くんの左手が
あたしの右手首から、そっとその指先へ降りてきて
キュッとそこを握った。
智「A、」
「っ、！」
ずるい。
名前で呼んでおいて
返事すらさせてもらえずに触れた唇。
照明が、ベッドにあたしたちの重なる影を映していた。
「っ………、ん、」
これが、キス、っていうものかと知る。
空いている右手が、あたしの髪に指を差し込んだ。
抵抗もせず、暴れもせず、
ただ、その重なる初めての温もりを受け入れた。
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知日(ともび)(プロフ) - みなちゅんさん» うれしいです！ありがとうございます！！楽しみにしていてください♪ (2017年8月14日 13時) (
レス) id: 2df8e76a2f (このIDを非表示/違反報告)
みなちゅん(プロフ) - こんばんわ、新作もまた読みにきてしまいました^ ^ また更新楽しみにしております！！ (2017年8月14日 0時) (レス) id: cc7a2757c6 (このIDを非表示/違反報告)
知日(ともび)(プロフ) - *-eni-*さん» eniさんさっそくありがとうございます！！！ウイスキーを飲んだ後の智でございます、うふふふ(*´ω｀*) (2017年8月8日 23時) (レス) id: 2df8e76a2f (このIDを非表示/違反報告)
*-eni-*(プロフ) - |qд･.)おじゃましまぁーす(笑) おトイレから出たらさとぴがいたー！お迎えは来れないみたいだし……どーなるのかなぁ！？(*´艸｀*) (2017年8月8日 23時) (レス) id: aaada8bfdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：知日(ともび)
| 作成日時：2017年8月8日 10時
