幾度のキスより《N.K》4

99.最後に ページ9

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お化け屋敷を出てからも



なんか食う？って焼きそばを買ってくれてる間も




屋上行こ、って校舎に入る時も




一度もその手は離れなかった。





初めて触れる、大野先輩の手は



男の人と思えないほど細くて



だけど、ゴツゴツした手の節は、やっぱり男の人なんだなって思わせられた。







和「あらら、お揃いで。」





一番、見られたくなかった。




今は一番、会いたくなかったのに。





智「ありゃニノだ」



和「手なんか繋いじゃって、デキてんすかやっぱり？(笑)」




「っ、」




離さないよって言うみたいに。





二宮先輩に見られてるその手を



思わず離そうとしたらまたキツく握られた。





智「お前、変な噂流すんじゃねーぞ(笑)」



「………。」



和「まあまあ、仲良くやんなよ」




じゃ、って私の横をス…と通り過ぎて行った。





智「Aちゃん行こっか」



「………はい…」





屋上の、昨日のベンチに座って




やっと手が離れた。





智「…ごめんね。」



「え……？」





なんもない、食べよ、って。




袋からパックをふたつ取り出して「ほい」ってひとつあたしにくれる。




フタを開けると、もわっと湯気が立って、ソースの匂いが広がる。




智「あ、箸、はしはし…」




ってそれも一膳あたしに渡して。




ちょうどいい熱さで



屋上には冷たい風が吹き抜ける。




智「ねぇAちゃん」



「はい」



智「後夜祭終わったらさ、屋上で待っててよ」






最後に一緒に帰ろ、って





そう言った。

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