幾度のキスより《N.K》4

94.２度目 ページ4

・

翔「そう、ここで上手に合わせて


この部分で絞る、そうそう。」




思った以上に体力と頭を使う照明のせいで、うっすら汗が滲む。



上着なんて、いらなかったなって




また、二宮先輩のことを思い出していた。




・




リハーサルが終わって、屋上に迎えに来た大野先輩は、なんだかすごく疲れていて。




智「明日だけど」




隣を歩く先輩の顔を見る。




智「ほんとに俺でいーの？」



「なんで…そんなこと…」



智「んふ、ごめんなんでもない(笑)」





今日、2度目のこの質問。



なにもかも、見透かされている気がして




「明日、楽しみです」




そう言って少し見上げた大野先輩の横顔は



いつもと変わらない、ふにゃんとした表情だった。





智「じゃ、明日ね」



「はい！」



智「始まったら、教室で待ってて」



「わかりました、お迎え待ってます(笑)」



智「ん、迎えいく(笑)」




じゃあね、っていつもの別れ道で




あたしの頭にぽん…と軽く手を置いてから帰って行った。





部屋に戻ると、疲れがドッと出てきて



ベッドに倒れ込む。




ぼふん……と揺れたベッド


そこから、さっきのでほんのり染み付いていた二宮先輩の香りが戻ってきた。




叶いっこないこの想いへ


拍車をかけるような匂いから逃げるように



急いで制服を脱いで、お風呂に入った。

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